シンプルな情熱別宅
2012-03-31T14:26:45+09:00
juno0501
ビョンホン関連覚書倉庫
Excite Blog
第一回上映会「我が心のオルガン」上映のお知らせ
http://juno0501.exblog.jp/12677034/
2011-01-11T21:28:00+09:00
2011-01-11T21:29:44+09:00
2011-01-11T21:28:11+09:00
juno0501
未分類
お問い合わせは「シンプルな情熱」本宅へお願い致します。]]>
スキン調整中
http://juno0501.exblog.jp/9861225/
2009-06-14T23:34:17+09:00
2009-06-14T23:34:19+09:00
2009-06-14T23:34:19+09:00
juno0501
未分類
純中劇場
http://juno0501.exblog.jp/6519386/
2008-01-28T21:09:00+09:00
2012-03-09T22:16:33+09:00
2007-11-06T23:06:00+09:00
juno0501
未分類
ほんとはカード(一枚)に文字いれようとして、こはなっちに「ひざにキス、か、合体してるとこキャプして・・・って頼んだら。。。こはなっちったら・・・次から次へと送りつけてくるんだもの。
もう、連続で見てたら・・・せりふが浮かんでしまったのでした。
こはなっちの美的だめだし数回を経てやっとすいかさんに送ることができました。
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感謝です。
http://juno0501.exblog.jp/5587734/
2007-06-10T14:51:00+09:00
2007-06-11T00:02:00+09:00
2007-06-10T14:51:46+09:00
juno0501
未分類
またまた bumomさんちからパクリ!
今回の「創作作家(笑)たちの座談会」の企画に快く参加していただいた皆様、本当に
ありがとうございました。
皆様の熱い思い、よ~くわかりました。
この別宅は私が、スキン練習用にとりあえず作った部屋でして、この素敵なスキンはもちろん
サイレントさんが手がけたものなんですが、過去の私の作品、聖域、ONE LOVEを
置いとくための倉庫として、日々放置していた部屋です。
通常、30-50人くらいしか訪問者のいないこの部屋に、この企画以来、大変たくさんの
方が訪れ、私に下さったメールでも、皆さんの創作に対しての姿勢、情熱、ビョンホンへの
愛を感じ取ってくれたことを、知らせてくださった方も多かったです。
うさるなさん、haruさん、ちろぱろさん、suikaさん、こはなっち、みかんさん、非公開J・・・ありがとうございました~!!
これからもビョンホンへの溢れる愛をOUTPUTして行きましょうね~
(ってしばらく私は読み手になりますが・・・)
また、なんか企画考えたら?声かけるかもしれません・・・
そしたらよろしくね。
感謝、感謝です。
☆☆☆2006年6月11日午前0時juno0712
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作家きどり・・・って言われてもいい。みんなどんなふうに創作してる???
http://juno0501.exblog.jp/5531436/
2007-06-02T00:27:00+09:00
2007-06-11T00:40:35+09:00
2007-06-02T00:27:13+09:00
juno0501
未分類
ぱくりんぐ ふろむ bumom・・・この彼、いいいい~~~♪
今日の記事はうさるなさん、haruさん、ちろぱろさん、すいかさん、みかんさん、こはなっち、そして非公開Jにお知らせしています。
かわいいかわいい自分の作品たちを自由に自己満足100%で語ってみませんか?
久々の創作「ETUDE」を終了し、書き上げた今しか書けない、いつもは全然書いてない私だから、今しか書けないと思うのでちょっと記事にして見ました。
実はこれ、ちろぱろさんとこで見かけたのよ。まさに常々私が思っていたこと。
だけど、書いてない私が創作してるお仲間には入れないし、偉そうに呼べるわけもなく、でも
今なら仲間に入れます!!!
なので、日ごろ私が抱いている疑問・・・それをちろぱろさんが記事にしていたので
それをそのままぱくらせてもらいます。(ちろぱろさん了承済み)
たくさんの創作を書いている方、創作文を公開している方がいらっしゃる中・・・
みんな、どうやって書いているのだろう?
と、思うことがあります。
今日は、たくさんのアクセスに感謝して、私の創作分を書いていくプロセス(?)を
書いてみたいと思います。(えっ?聞きたくない・・・?)
私が創作を書くとき、いろんなパターンがあります。
① 例えば、いきなりstoryが浮かんで、ほぼラストまで行ってしまう時。
② キーワードだけ思いついて、それに肉付けしていくように浮かんでくる時。
③ 約1話分を書き残して置いて、続きを書き足す時。
④ その時の出来事に基づいて、書き足していく時・・・など。
なるほどね~
私のことで言えば、今回のETUDE以外は3作品(聖域、ONE LOVE、シンプルな情熱)とも
①なんですよね~①+②もあるかな。
だから、今回のように、次が決まってないのにUPするっていうのはすごく怖かった~
反対にいつもそうやってる人たちもいるってことよね。尊敬~
この際だからみんなにいろんなこと聞いちゃいましょう!って思いまして・・・
あ)ネタはどうやって、いつ?生まれるの?(そんなこと決まってないか)ネタのうまれたエピソードなど。
い)ちろぱろさんのパターンだとすればどれで行ってます?
う)自分の書いたのでどれが好き?あるいはどのシーンが好き?
え)ここに集まっているみんなに、ぜひ聞いて見たいことある?
お)ぜひ、いつか書いてみたい構想ある?
か)書くときどんなソフト使ってる?メモ帳?WORD?それともじかに?
これらの質問は全部に答えなくていいですよ。
それではまず、私からね。
あ)ビョン雑誌みてたり、音楽(洋楽)聴いてたりするときかな?ETUDEのイントロは、ステイシーオリコのSTUCK聴いてて思いついたシーンなんだよね。でもETUDEが終わってみたら全然合ってなかった・・・
い)・・・ETUDEは③・・・それ以外はさっきも言ったように①か、①+②
う)今はETUDEかな・・・いつも新作UPすると、それが一番ベストに思える。でも日数経つとアラがめだってくるのよね・・・
え)それはこはなっちだわね!「つぶやき」から「つぶやき進化系」に変わったよね。画像とのコラボですごく読んでる人を妄想に駆り立てる・・・なんで急に?あ!前からそう思ってたの?随分前に書こうと思ってて・・・ってメールもらった?ほんとにすばらしわ~
お)どなたかへのレスにも書いたけど・・・社会的マイノリティ・・・それをビョンに演じてほしいわ~
社会もすっごく冷たい・・・前向きになろうとしても、苦労の連続、偏見との戦い、ここまで辛い目に合うか?っていうような・・・そしたら主人公はどうなるんだろう・・・まったく、植物状態にしたり、マイノリティにしたり、とことん彼を痛めつけたいらしい・・・こんなの面白くないよね。
だから多分無理だな。
か)私はWORD。処女作「聖域」をかきあげてからPC環境のない(悪い)友人に印刷して送ってるのよ。(こんなシロウトのでも、読むのが楽しみだと言ってくれて・・・実は彼女の批評はものすごく怖いんだけど。。。)それと、ONE LOVE UP後にyahoo重くてメールくれた人にWORD添付して丸ごと送るっていうことを何度かしたかな?なので「mamaconngo 創作」のフォルダーには4つ目のETUDEが並びました。
それでは皆様書きこみよろしくね~私もレスっていうか書きこみするわ~
◎以下は自分のも含めて皆さんの作品の中のjuno的ツボの部分ね。長いから自分のとこだけ読んでくださればいいですよ。
☆私のはあっさりとね・・・
聖域・・・これはね。冬ソナに嵌ってる頃、イカゲソ民宿で止まった二人が「なぜ大人しく寝てるの?悶々ともせずに??」ってここに違和感覚えてムショウに書きたくなった処女作でした。「体の相性の合う女を探してる男」よ。すげ~~~
ONE LOVE・・・これはね。甘人でカンヌ行った直後に「ビョンホン!私がパルムドールあげるから!!」って思いっきりべタでメロを書きたくなってかいたのでした。でも、このユリって才能がありすぎたわね。INPUT OUTPUTのバランスが悪いっていうのか・・・難聴にもなるわね。
シンプルな情熱・・・今までオブラートに包んできた18禁のシーンを急に書きたくなってあっという間に書いたもの。このストーリーのキーワードは「一緒にイケル?」なんだけど、先日bumomさんと会ってたとき「シンプルな情熱は一緒にイケル?の言葉がよかったね!」って言ってくれて嬉しかったわ~この言葉ってとっても思いやりのある言葉だと思うんだけど・・・
ETUDE・・・無事おわりました!!!まだ自分の中では興奮さめやらず。。。。
☆うさるなさん
LEE、ソヌ、美日々・・・3つも同時進行ってすごすぎる!頭の中身どうなってるの?
日々、あれだけ記事UPしているのに??あ~吐き出したいことが山ほどあるのね~
ビョンへの思いを!
LEE・・・これは最初J姫って読んだときヒストリカルロマンかと思ったわ。バンパイアだし中世が舞台なの?って。そしたらなんと現代劇!!
LEEでとても印象的なのはLEEがJの白い首筋に歯をたてて、バンバイアの血と融合?させるシーン。これは結構官能的なシーンとも言えるんだけど、息を呑んで読んでしまいました。あ~もっとLEEの気遣い、Jの戸惑いやら、そしてもっと官能的に・・・って私にかかると全部エロクなるから気をつけようね。だけど、このLEEったら絶倫なのよね。・・・
ETUDEの「L」も多分絶倫だと思うんだけど、LEEと比べたらどうなんだろう?
テクニックはLの勝ちだと思うけど、あ!どっちも「L」じゃん!!つまり、「L」で始まる人は絶倫か・・・すごい発見(どうでもいいか!)←ここ、リンクさせたかったんだけど、2回も消えてしまって、また記事さがしたんだけど、みつからなかったの・・・知ってたら教えて・・・
そしてうさるなさんの書いてるのでとても好きなのはね。
2006年11月28日旅立ち・こちらから~
後半が特にいいんだけど、
何も心配などいらないわ。
あなたは愛されているから・・・
とてもとても・・・愛されているから・・・
確かに、そう、聞こえて来た。
あぁ、歩いてゆくよ。
君の思いと共に・・・
↑このラストいいんだよね~ヨンスィなうさるなさん!聖母みたいだわ~
これ、読んだとき感動したなぁ・・・って私コメントしてないじゃん!!
感動しすぎてジェラジェラだったのかも・・・
そうか!うさるなさんは ビョンLOVERじゃなくて、ビョンの「母」ってことでよろしく!
☆Haruさん・・・
もうライフワークと化した「FLY ME TO THE MOON」ですが、ほんとに長いよね。
あの滂沱の涙を流させたパターンから、今は「二人で行きていく」ストーリーにかわりました。揺と等身大のビョンがかわいいよね・・・いじらしいっていうか・・・
2007年2月20日君は僕の運命6話はこちらから
プレミア試写会で来日した彼はげっそりしてたんだよね・・・そして・・・
それでなくても華奢な揺の体はこの半月の間にさらに細くなっていてちょっと力を入れたら折れてしまいそうなほどだった。
手にちょうど収まるほどの可愛い胸ももっと小さくなっていて形のいい大好きなお尻も驚くほど薄くなっていた。
こんな華奢な弱々しい身体なのに・・・体調だっていいはずはないのに。
腕の中の彼女は彼を喜ばせるために一生懸命だった・・・彼女の気持ちが彼女の唇から痛いほど伝わってくる。
揺・・・・ここへ俺を呼んだのは俺のためなんだろ。
ビョンホンは彼女を愛しながら胸の中でそうつぶやいた。
なんて切ないSE○でしょう・・・痛々しいよ・・・つらいシーンでした。
でも、haruさんので大好きなのはね!FLY MEももちろんですが
2006年7月10日テプン×スヒョンはこちらから!!
このシリーズ面白いんだよね。
コメント数はもちろんミンチョル×スヒョンなんだけど、
あの男はああ見えても全部わかっていた。
わかっているがゆえ自分の幸せより相手の幸せを優先してしまう。想いの伝え方だって不器用だがそれなりにストレートに相手の心に届く伝え方を体得してるようだった。
そう!テプンってまさにこれですわ。
「お前、人の幸せってものが全然わかってねえな。それでよく『天使です』なんて恥ずかしげもなく名乗れるもんだ。いいか。自分の好きな人が心の底から幸せだって思っていない姿を見るのは辛いことだ・・そんな彼女の姿を毎日見てそれで俺が幸せになれると思うか?ん?ジソクだってそうだ。金や仕事は自分で頑張れば何とかならないこともないがあいつに好きな女を金のために捨てたっていう気持ちをずっとしょわせたまんま俺が幸せになれると思うか?
心に他の女がいるのに結婚なんかしてジソクもあのチェリムっていう女も辛いだけだろ。そんなの本当の幸せじゃない。そんなこともわかんねぇ~のか天使のくせに」
Haruさん、よくキャラ検証してるわ~
☆Chiroparoさん・・・
Chiroparoさんはブログの表で美日々ストーリーを紡いでるんですよね(実は私最初しか読んでません・・・ごめん。夏休みまで待っててね)
ヨンスのほかにジニョンという女性がいて、子供まで生んでいるんですよね・・・
私が好きなのはCREC私が好きなのはCRESCENT・こちらから~
その声は、あまりにも彼の声に似ていた…
思わず顔を上げてしまうほど、その声の中に悠基が居る気がする。
「悠基…」
私の声帯が1年ぶりに、音を出した。
ねぇ、もっと聞かせて…そう思って、声の主の腕を掴んだ。
悠基の声なのに、どうして呼んでくれないの?
振り返った顔には驚きの表情が浮かんでいる…そう思った瞬間、視界は闇に包まれてしまった
いやぁ~つかみはOKでしたわ。
このレイナは自分のせいで夫を交通事故にあわせてしまったという悔恨から声がでないんだよね。気晴らしに行った韓国で・・・亡き夫と同じ声に会う・・・
男性に体を開くのは、彼を…悠基を失って以来だった。
それが悪いことだとか…
いけないことだとか…
その時の私には、何も考えられなかった。
我を忘れるほど、彼に溺れてしまいそうで…
このまま忘れられなくなりそうで、こわい…
ただ、思うことはそれだけだった。
何度体を重ねても、彼の滑らかな肌が離れると寂しくて寒くて…
その夜の私は、何度も何度も彼の体を求め続けた。
この淡々とした静かな語り口・・・
レイナは夢と現実のハザマで夫を追いながら・・・韓国で出会ってしまったイ・ビョンホンと一夜を共にしてしまう・・・
チロパロさん、大人っぽい時間を書くのがうまい。しかも余韻があるよね。静かな中で二人の吐息しか聞こえないみたいな・・・私がcrossよりこっちが好きなのはレイナが幸より大人の女だからなんだよね。(雰囲気ね)
16話と17話でレイナのつぶやき、ビョンホンのつぶやきと交錯するんだけど、
これがまたいいのよ。
そして、よかったよ~ハッピーエンドで!!
これ、毎日楽しみにしてたわ~
韓国のトップスターのビョンホンとのつきあい。。。それは実際も大変でしょうね。
現実の彼も素敵な恋をしていてほしいわよね。
☆SUIKAさん・・・
私はスイカさんとお近づきになったのは最近なんだけど、彼女の最初の出会いは
ジホの独白はこちら でした。
私「cut」大好きなんだけど、彼女のジホはまさにジホ!淡々と語るジホの独白の中に
表面では「善人」というイメージの彼が実はとても上手に愛人と逢瀬を重ね、ステイタスのあるピアニストの妻もいて・・・うまくやっていたのがよくわかる。
そしてこのジホと愛人のHシーンがどきづくないのにエロイ!(JUNOさん、学ぶように!)これは本当に面白かったわ~
そして更に感動したのが・・・LOVE & LAUGHTER(タイトルもいいよね)!!
エキサイトでお隣さんになってから、チャンミの彼の独白・・・feelds of goldの曲にあわせてupした彼の独白は・・・ささくれだったJUNOの心をやさしくやさしく
なでてくれたのでした。
チャンミの彼の告白はこちら
いや~泣けました。じんわりと暖かくなりました。あのビョンホンが優しい穏やかな顔で語るもんだから。。。
彼女ソヌもすご~く長いのかいてるよね。
ソヌについて、どうぞ語ってね!!。思う存分。
そして今、私はグンホとヘインに夢中ですわ。
☆こはなっち・・・
あの~こはなっちって私と同じエロエロおばさんだったはずなんだけど・・・
最近の彼女ったら完全に二の線よ!!
つぶやき進化系・・・ 5月13日がスタートでしたね。こちら
短い一シーンを書くのってとってもむずかしい。妄想かりたてるのはもっとむずかしい。
そしてその妄想は「ビョンホンのとなりにいるのは私よ!」って思わせちゃうんだよね。もちろんこはなっちのは画像ありきなんだけど、その画像がまたツボなわけです。
最近キャプチャ技術が進化してとてもよいと思います。
でも、これって、この二の線の1シーンを「こはなっち」が書いてるからいいんだよね。
でも、急にどうしたの?ほんとは書く予定だったのね?ずっと前から。
だってさちこシリーズで「さちこぉ~」ってつぶやくビョンホンもツボだったんだけど、
ほんと、最近のいろんな1シーン・・・いいわ。
やっぱりビョンホン相手だから、こはなっちの舞台に出てくる女性も大人だよね。
(現実はしらないけどね~)
どうやってこんな素敵なシーンをあの、こはなっちが創作してるやら・・・鉛筆なめなめ、ノートに書き込んでるのかなぁ・・・
6月3日のがまたツボ~こちら
彼がゆっくり目をさます。
恥ずかしそうに瞳がゆれて、私をそっと胸に抱く。
そして・・・・・小さな声で私に言った。
『 好き・・・だ 』 って・・・・
もちろん画像とセットでお楽しみくださいませ~
☆みかんさん・・・
実はみかんさんちはたまに行ってまとめ読みしてるんだけど、最近の彼女、よく研究してます。
私はまったく正反対の「感覚派人間」これだけの情報収集、整理整頓されてるのを読みながら
感嘆してしまう。その反対にみかんさんの創作のやさしい雰囲気には、ちょっと表のハードな文面とはまったくちがった雰囲気が感じられてこれもまたおもしろい。
その中でも忘れられないのがこれ!!
純中救済ストーリーはこちら
体の震えを沈めると
私はテラスに座って風を受けていた。
どうしたらいいんだろう・・。
引き返せない、それだけはわかっていた。
夫の素顔が崩れて行く。
それがホジンなのか、テジンなのか、
私が愛したホジンはどこまでが全部だったのか、
そして、テジンがどんな思いでそれを見ていたのか。
その狂った愛をこのまま受け入れられるのか、
何もわからなかった・・。
お腹の中に宿る小さな命。
私は全て自分の気持ちに委ねた。
そして、タブーを認めた。
テジン・・。
非難するまなざしは一生ついてくるだろう。
それでも、構わない・・。
この愛に生きようと思う。
ひとりぼっちの愛が報われた瞬間、
手渡されたタバコに涙がこみ上げてきた。
俺でいいんだね・・。
書き出しはこうだ。
これ、さらに続きます。どうぞ、読んでみてね。
純中・・・・あの映画のラストの中途半端なこと!映画を見た私たちに、ウンスはなんであんな表情してるんだろう?と不安を残すような彼女の顔が忘れられず・・・
そして、その後に読んだノベライズで少し救われた。
だけど、それでも感じるこの二人の将来・・・おなかの子供は幸せなの?
韓国って義姉との結婚・・・タブーですよね?それでも愛を貫くことはエゴでは?
などなど、けしてハッピーエンドとは思えないこのストーリーの結末を案じたものでした。
それが、このみかんさんの紡ぐストーリー、テジンとウンスの娘が書く両親への愛のストーリー・・・これ読んで、この映画の不安がいっぺんに吹き飛んで、救われました。
本当に救われました。
むしろ、この映画が、この娘が編集者を待っているところからはじまったらどんなによかっただろう・・・そう思いました。
感動するストーリーを読むと「ありがとう」って思うよね。これもそんな感じでした。
実は他のはとばしながら読んでます。
いつか全部読ませてね。
☆非公開J ←リンク許可もらいました。
非公開Jは夜の創作作家。18禁専門でございます。
コメントはすべて非公開を求め、濃いのは「小部屋仕様」となっている。
彼女の創作を読んでて、イ・ビョンホンという存在がいかに妄想を掻き立てるのかが
よくわかる。
私がシンプルな情熱をUPしたとき、イントロでちょこっと書いたんだけど
「みんな、妄想、妄想っていうけど、どのラインまで妄想してるの?妄想ってヤッテルってこと?」ってね。
まさに 非公開Jはそれをずばりと書いてる。
だからってえぐいか?っていうとそうではない。
彼女の許可をとり、最近小部屋でUPしたのを引用しますね。
彼氏に二股かけられたことを知った女子大生は「B」と出会う。
そして・・・
「そうだね…知らない」
「でも、キミが寂しいっていうことは、知ってるよ」
「壊して…っていっただろう?」
そして、耳元で囁く。
「また……壊したくなった…」
ほんのさわりだけで申し訳ないんですが、私は「B」がつぶやくこういうエロイせりふが好きだわ~
「B」って愛の狩人?
エロのバリエーションってむずかしいよね。
彼女は初物がすきらしいのでこれからも新しいパターンに挑戦するでしょう・・・
あ!非公開Jは今回に限り、質問に応じるということですので、何か質問あれば遠慮なく~
それにしても、重いわよ!ほんとに!あなたの裏は!!
そんなわけで、それでは皆さん、自由にどうぞ~質問に答えられる人は答えてね。自分のを語りたい人は好きなだけ語ってください。他の人への質問でもいいですよ~私もレスというより勝手に書き込みますから~
◎これ、読んでる人でも、書き込み自由です。(質問以外はレスしないかも)
◎私以外の人への質問がある場合は公開コメントでなければ伝わりませんので、宜しく。
◎非公開Jのお部屋は本人の許可を得てリンクさせてあります。そちらから飛んでくださいね~~~!!(メールは受け付けておりません)
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ありがとう~
http://juno0501.exblog.jp/5312405/
2007-05-02T21:46:33+09:00
2007-05-02T21:46:33+09:00
2007-05-02T21:46:33+09:00
juno0501
未分類
皆様の画像、パラダイスの画像、みんなこちらにうつして今、非公開にさせていただきました。
本当にありがとうございました。]]>
コロッケガ~
http://juno0501.exblog.jp/4807300/
2007-02-22T22:07:00+09:00
2012-03-31T14:26:45+09:00
2007-02-22T22:07:42+09:00
juno0501
コロッケガ~・・・
これ、確かうさるな家で見たわ~
週刊誌の彼だよね~ う~ん、大人っぽい~素敵・・・
え~昨日は、六本木シネマートで夏物語を見て、そのあと、西麻布「いまどき」へ。
何を隠そう、ビョンさんが、プレミヤ試写会の来日の時に秋元さんに連れてってもらったお店です。
サマンサのイベントで「コロッケガー」「コロッケガー」って言って、その言葉にすっごく反応してることを知った彼ったら「コロッケ?」って言って観客が湧くのを楽しんでたよね~
あの画像。。。かわいかった~
こじんまりとした二階建のお店でした。
お客様は・・・おそらく、私たちと同じような、ビョンホンつながりの女性ばかり・・・
それではビョンホンさんの召し上がった(らしい)メニューの御紹介~
これが噂の「和牛カルビ肉じゃがコロッケ」です。
大きいのよ。これ。テニスボールくらいはあるよね。
ビョンホンさんは甘い系の味付け、多分好きでしょうけど、これの中身は肉じゃが・・・って感じはそれほどしなくて、かすかに甘い!ってくらいですかね。ボーリュームありました。
「特選和牛たたき」・・・これはポン酢かかってて、おろしニンニクをつけていただく、想像どおりのお味でした。おいしかったです。
画像悪くてすみません。マクロにしてませんでした。
「あぶりあご落とし明太子」です。そんな辛さも感じずこれ単品だとかなりしょっぱい。ごはんやおじや、あるいは日本酒の肴にいいかもね。
ビョンさんは何を呑んだんでしょうね。それほどお酒強くないみたいですけど。
「九州しろくまかき氷」です。
彼、パッピンス食べて、おいしかった~って言ってましたよね。
これは真上から撮ったんですけど、練乳かかってて、多分、パッピンスよりかなりあっさり??
ビョンさん・・・甘い系の味付けごのみ、とか、けっこう子供ごのみメニューが好きなのかも??
ほんとはサーブしてくれたお店のスタッフ(女性)がとっても素敵な山田優劇似の女性だったんですが、それもカメラに(彼女の了承済み)で撮り、お店に記事UPしていいかを確認するために電話したときに「モデル事務所所属のスタッフもいるため、そういう写真以外はUP、OKですよ!」って言ってたので・・・今回は残念ながら彼女の画像はカット!。
ビョンさんは、お店に入ったすぐ左横(一階)の個室だったそうで、そこはお座敷なんだよね。
窓を背にした場所に座ってたそうです!(お店の方情報!)
夏物語のチケットも残るはあと2枚・・・と思ったら、見てみたい!って人がいたのでその方にプレゼントすることに。だから、私はあと1枚か・・・
惹かれるように何度も夏物語のソギョンに会い続けた週末だったけれど、
そろそろ、私も落ち着くかな???
素敵なお店でした。
連れて行ってくださったMさん、Bさん、ありがとうございました!]]>
聖域 ⑧
http://juno0501.exblog.jp/4806891/
2007-02-22T21:39:56+09:00
2007-02-22T23:45:00+09:00
2007-02-22T21:39:56+09:00
juno0501
聖域 ⑧
ある日の昼 リョウヘイからアキコに電話が入った。
「日本に帰れるよ!」
中国の現地法人を立ち上げるために、リョウヘイは責任者として、求められているもの以上の成果を出し、実績をあげて日本に帰ることになったのだった。
帰国までの間 リョウヘイはいつにも増して 嬉々として引越しの準備をした。
まだ1度しか日本に行ったことのない息子に日本にいる双方の家族の写真を見せながら饒舌に日本の話を聞かせた。
飛行機が成田につくとコウヘイを抱っこしながらリョウヘイはうれしそうだった。
タクシーの中で一人前に話すコウヘイの話をうん、うんと優しく頷きながらリョウヘイ達3人は自分たちの家に向かった。
四谷の社宅につくと、と言っても瀟洒なマンションだが、すでに届いている多くのダンボールに囲まれて、リョウヘイとアキコはホット一息ついた。
すでに7時を過ぎていたのでリョウヘイは食事に行こうとアキコに声をかけた。
リョウヘイがかつてよく行った赤坂の和食屋に連れて行き、思い切り和食を堪能した。
5歳のコウヘイには店の雰囲気が少し大人っぽかったがアキコの料理上手なおかげで何でもよく食べる子供だった。
アキコはコウヘイのために茶碗蒸しやマツタケご飯など、子供が食べられそうなものをいくつか注文し、自分たちは刺身を肴に日本酒を飲み始めた。
「とりあえず、無事に日本に戻ってきてよかった!」
リョウヘイは上機嫌だった。
日本に戻ることが決まったとき以来リョウヘイが嬉しそうにしていることがアキコを少し不安にさせていることをリョウヘイは全く知る由もなかった。
「考えすぎ・・・」
「私たちはコウヘイが生まれてからこんなに幸せでいる。今だって幸せ・・・」
アキコは今日 飛行機の窓から成田が見えたときに、ロンドンに赴任そうそうリョウヘイと絵里の関係で動揺した数日間を、封印していた記憶を呼び起こしてしまった。
その不安もコウヘイのおかげで乗り切ってきた何年かがある。
外国では全く感じることのなかったこの不安が東京に戻ってきてから自分の中で小さな芽になっていることを感じていた。
東京に戻ってからはリョウヘイの世田谷の実家、国立のアキコの実家にコウヘイを連れて行くことで週末が忙しかった。
日本に戻る前からお互いの実家の親達が「コウヘイを連れてきて・・・つれてきて・・・」と、それぞれスケジュール組まなきゃとため息をつくほどラブコールがすごかった。
アキコに似て人懐っこいコウヘイはすぐに実家の親たちに馴染み、「今日は泊まれる?」とか「今度はいつ来れる?」と双方の親たちに哀願された。
リョウヘイも帰国してからしばらくは様々な仕事の引継ぎなどや、歓迎会や上司からの食事の誘いなどで毎日忙しかった。その間にコウヘイの幼稚園を探したり、東京のアキコの友人と久しぶりに会ったり、その忙しさのおかげで一日がとても早く感じた。
東京の生活に慣れると、いつもと変わらず、コウヘイをかわいがりアキコにも優しいリョウヘイを見ながら、その小さな不安も忘れかけていた。
季節がひとつ過ぎると、穏やかな日常が訪れた。
コウヘイに会いたがる双方の両親のために週末はやはりどちらかに行くことが多かったが、アキコは幼稚園にコウヘイを迎えに行き、母親たちのお茶の時間を共有したり、習い始めたスイミングスクールに連れていったりする毎日だった。
リョウヘイは連日帰宅が遅かったため、コウヘイが8時すぎに寝てしまうと長い夜を一人ですごした。
こうやって落ち着いた日々が訪れると、アキコは余計なことを考えるようになった。
少なくとも今の生活の中に絵里の影はまったくないのに、いつも近くに絵里がいるような気がした。リョウヘイに絵里のことを話題にしたら彼はなんて答えるだろう・・・アキコはコウヘイが眠ってからの一人の時間が怖かった。
ある日 アキコはコウヘイを連れて銀座のデパートに出かけ、何点かのコウヘイの洋服を買った。食欲もあり、体格もいいコウヘイは今着るものがすぐ小さくなる時期だった。
アキコ自身の洋服や、リョウヘイのネクタイなども見たが、買わずに帰ることにした。
一階の化粧品コーナーでアキコは足を止めた。しばらく眺めその中の一つを買おうと手にとる。
店員が「プレゼントですか?」と聞くとアキコは自宅用ですと答え、それを受け取り帰宅した。
夜になるとコウヘイと一緒にお風呂に入り彼を寝かしつけた。
コウヘイの部屋から出るとアキコは今日買った小さな箱を取り出してしばらく眺めた。
11時すぎにりょうへいが帰ってきた。
アキコは手早く食事の用意をしてテーブルに並べはじめた。
リョウヘイは風呂から出ると、バスタオルで髪を拭きながらリビングのソファに座った。リョウヘイの前に小鉢を差し出したとき、リョウヘイが箸を止めた。
「コロン 変えたの?」
「気づいた?今日 コウヘイと銀座に行って・・・」
そう言いかけてキッチンに行こうとするアキコをリョウヘイが突然 抱きしめた。
目をつぶるアキコ・・・
ずっとアキコを抱きしめながらリョウヘイは思い出していた。
絵里の残り香だった・・・
アキコはリョウヘイの腕をはずし、「冷めちゃうわよ」と小さくつぶやいた。
ハッとするリョウヘイの顔。
リョウヘイを見ながらアキコは 今 目の前にいる男は絵里を思って私を抱きしめた・・・
諦めたようにそう思った。
今日買ったコロンは昔 絵里と何度か会った時に、抑えた品のいい香りをいつも感じて絵里に尋ねたことがあった。
絵里はそのコロンがブルーノートと伝え、
「でも アキコさんは若いし、これじゃ少し落ち着きすぎてるわよね」
そんなやりとりを今日思い出して買ったのだった。
リョウヘイを試そうとしたのではなく自分も年を重ね、いつまでも甘い香りのコロンは似合わなくなってると思って買ったつもりだった。
この香りをリョウヘイはたまらず私を抱きしめた。
いや、私は夫を試そうとしたのだ・・賭けをしたのだ・・・
「先に休みます」
アキコはそう言うと寝室に行った。
ベッドに入るとアキコはいろいろなことを思い巡らした。
コウヘイが生まれてずっと幸せだと思い続けてきた。
実際にリョウヘイはコウヘイを愛し自分にも優しかった。
東京に戻ってからのこの不思議なあせりをどうすればいいのかわからなかった。
今 二人が不倫を続けているわけでもないのに 自分はなぜこんな被害妄想を抱くのだろうか?
そう 単なる思い過ごしと思いたかったのに・・
彼の中に10年以上たった今でも絵里がいたことを感じてしまった今、自分はどうすればいいのか考えた。
リョウヘイは一人残されたリビングでビールを飲みながら考えていた。
絵里のことは忘れようとしてきた。
自分の中の絵里の存在がアキコを苦しめ彼女を悩ませたこともあった。
だがコウヘイが生まれるとその存在の愛しさにリョウヘイは自分でも驚くほどコウヘイをかわいがった。
コウヘイが自分を必要としてくれるのを肌で感じそれをまっすぐ受け止めると自分が父親になれた満足感を感じた。
長い海外生活の中で明るく努力してくれたアキコに感謝し誠実であろうと努力した。
ただ、誠実であることは愛していることとは違う。
また、本当に自分が誠実だったかどうか・・・
アキコを心配させたとおり、絵里を心の中から拭い去ることはできなかった。
アキコとベッドを共にしても自分が満たされたかと聞かれれば頷くことはできなかった。アキコもそれを感じていただろう。
リョウヘイは銀座の喫茶店で絵里に言われたことを思い出していた。
「家庭を作り、家族を幸せにするのがあなたの役目・・・」
自分の未練のせいで絵里を傷つけ、幸せだったはずの彼女の家庭まで壊してしまった。
結婚式の日に絵里はさわやかな笑顔で言った。
「アキコと一生添い遂げてほしい」と。
自分とのことはすでに過去のものとでも言いたげな表情で。
思い出しながらリョウヘイは絵里を無性に抱きたいと思った。
絵里の白いうなじにキスをし、細い肩を抱く。
手の中の、絵里の暖かい乳房の感触。
胸の鼓動・・・
ソウルで再開し一晩中戯れあったあと、裸のまま自分の胸にもたれて眠ってしまった絵里の寝顔・・・
この東京のどこかで絵里は一人で生活しているのだろうか・・・
それとも誰かと結婚して幸せに暮らしているだろうか?
自分の絵里に対しての気持ちは何なのか。
白馬で初めて出会ってから何年経つというのだ・・・
自分が結婚してからだって10年もたっているのに、なぜ忘れることができないのか?
絵里を抱きたくて逢瀬を重ねた。
会っているときの静かな満たされた時間。
彼女の体のことだけで自分の思いは続いているのか?
それとも愛だろうか?
「いい歳をして何を言ってるんだ・・・」
リョウヘイはアキコの眠る寝室に行くことができず一人の夜を過ごした。
翌日、いつもどおりの朝。
リョウヘイは、今日は接待で遅くなるから夕食はいらないとアキコに告げ、出勤した。
11時過ぎにリョウヘイが帰宅すると室内は真っ暗だった。
リョウヘイはいぶかしく思いながら明かりをつけるとリビングのテーブルの上に置手紙があった。
「コウヘイを連れて国立に帰ります。
しばらく 落ち着いてあなたとのことを考えようと思っています。 晶子」
国立の実家で洗濯物をたたむアキコにコウヘイが尋ねた。
「ねえ パパは?パパはいつ来るの?」
「パパはね お仕事で・・・」
そう言おうとするとコウヘイが泣き出してしまった。
国立に戻ってから一週間がたち、最初は旅行気分で喜んでいたコウヘイもさすがにリョウヘイに会いたがりアキコを困らせた。
何もいわずに実家に戻ってきたアキコに両親は何も聞かなかったが、リョウヘイを思い出して泣くコウヘイを見ると両親もかわいそうになって、帰ろうとしないアキコを心配し始めた。
アキコが和室のコタツに入って新聞を読んでいる父親に夕食が出来たわよと伝えに来た。
腰をあげながら、父親はアキコに言った。
「リョウヘイ君 浮気でもしたのか?あいつはいい男だからな 女性はほっとかんよ。
だが、アキコ、お前も新婚さんじゃあるまいし1度や2度の浮気くらいで動揺するな」
父親の言葉に
「そんなんじゃないのよ」
とアキコは小さな声でつぶやいた。
浮気なんかじゃない。
結婚してからリョウヘイさんは一度も絵里さんに会ってない。
でも何年たっても断ち切れない彼女への思い、それは浮気なんかじゃない・・・
由香は自分の部屋の本棚でアメリカの大学で勉強してきた何冊かの分厚い本を探していた。
女は由香に昼食を運んできた。
「ここに置いとくわよ。」女が立ち去ろうとすると由香が言った。
「・・・私も下で食べる・・・」
由香は枕の下の睡眠薬の瓶を女に見つけられ二人で抱き合って泣き続けた時から少しずつ女に心を開くようになった。
少しずつ話が出来るようになった。
女は嬉しかった。
いつもと変わらずに家事をしながらも一言由香と言葉を交わしただけで嬉しくてたまらなかった。
由香はいろいろなことを話そうと思っても照れくさくてなかなか昔のように話すことがまだ、できなかった。
その夜、夫が帰宅すると女は自宅に戻った。
女の用意してくれた夕食を夫と由香は一緒に食べながらいろいろな話をした。
由香の顔にようやく笑顔が戻ったと夫は安心した。
「パパ、私 日本の大学でもう一度心理学を勉強しようかと思ってる」
その言葉に驚いて夫は口を開く。
「賛成だね。アメリカで勉強したこともきっと役に立つと思うよ。大賛成だ」
由香はうれしそうに笑った。
そして父親に聞いた。
「ねえ パパはママのどこが好きだったの?」
「うーん ママは昔から自分をしっかり持った凛とした女性だったし思いやりもあった。自分自身がキチンとしているからこそ相手を思いやれるって事だよね」
「ママの事で離婚してパパはママが嫌いにならなかったの?」
「・・・信じられなくてその時は相当落ち込んだ・・でも夫婦じゃなくなったけどママは一番近い友人としてこれからもずっとつきあって行きたい女性なんだ。」
首をかしげながらも由香は両親がお互いを認め合ったいい関係であることが嬉しかった。
「私、中学生のとき、仕事をしながら毎日いきいきとしているママのこと すごいと思ってた。自慢だった」
そう言うと心の中で
「今もそう思ってる」
とつぶやいた。
「そう?!その言葉、ママが聞いたら喜ぶよ!」
そして続けた。
「由香もやりたい仕事をみつけて思いっきりやってみなさい。でもね」
と夫は一瞬ことばをさえぎり
「結婚したら、ママよりも、もう少し だんな様に甘えた方がいいぞ!」
二人は笑った。
夫は自分の寝室に戻ってから パソコンを開くと、女にさっき由香と話した事をメールで伝えた。
長い長いメールだった。
春のなりかけだった。
リョウヘイは国立に戻ったアキコとコウヘイのことで心を悩ます日々が続いた。
国立にも出向き、何度か電話もした。
コウヘイは父親を見ると嬉しそうに声をあげて胸に飛び込んできた。
アキコは相変わらず頑なだったが、国立の家を出るときに泣き叫ぶコウヘイを思ってリョウヘイは自分を責めた。
絵里への思い・・・
心の中に住んでしまった女を消し去ることがどうしてもできなかった。
こんな気持ちだからアキコとコウヘイを不幸にさせている。
国立から戻ると自分がどうしたらいいのかいつも考えた。
今の自分ではアキコは受け入れてくれないだろう。
離婚することになるのだろうか・・・
リョウヘイは昔から全く変われない、孤独な自分の性格をうらんだ。
ただ、今はコウヘイがいる。自分を求めて泣くコウヘイを思い出すとどうしていいのかわからなかった。
ある日の土曜日、リョウヘイは狭心症で入院している父親の見舞いにまた病院を訪れていた。
会計を待つ、ひとけのまばらな、長いすの羅列の端に絵里が座っているのが見えた。
リョウヘイは絵里に向かって歩き出した。
「お久しぶりです・・・」
リョウヘイが声をかけると絵里は少し驚き、笑顔で会釈した。
少し話しをしていいかとリョウヘイは絵里に尋ね、絵里の会計が済むのを待って、病院内のレストランに入った。
絵里はリョウヘイをみつめながら、この人は、男らしく、誠実な雰囲気のまま、知り合った時のまま 年をとっている・・・
そう感じた。
「お嬢さんはまだ通院されてるんですか・・・」
リョウヘイは、以前、この病院の廊下で 会った時に聞いた、カウンセリング室に通っているという娘のことが気になって尋ねた。
ただ、以前と違い今日の絵里は顔色がよかった
若草色のアーガイル模様のセーターを品よく着こなした絵里を見て、ずっと自分の心の中にいたそのままの、美しい彼女を見た。お互いに年を重ねてきたが、まったくかわらない、暖かい絵里の笑顔をみつめた。
「娘は自殺未遂をしたんです。」
「でも・・やっと最近 元気を取り戻してきたんです。」
リョウヘイは絵里の話を黙って聞いていた。
絵里が娘のことでどれだけ心を痛めてきたか、容易に想像させた。
「高岡さん、お子さんは?」
「今 5歳になる男の子がいます。コウヘイって言うんです。」
絵里はリョウヘイのことばを聞いて嬉しそうに頷いた。
「結婚して子供も生まれ、アキコを愛そうとしました。
でも今アキコはコウヘイを連れて国立の実家に帰ってるんです。」
「・・・え?・・・」
「自分がつくづく 昔から変われないことがいやになります」
「子供を愛しています。でも アキコを大事に思ってきたけど、愛することができなかった。
アキコもそんな僕に愛想をつかして実家に帰ってしまったんです。」
絵里はリョウヘイがあまりにも率直に自分のことを話しはじめるので、何も答えられずにだまっていた。
リョウヘイは 自分が絵里に告白することによって絵里によけいな動揺を与えてしまうことは充分承知していたが、今 彼の気持ちをすべて話せる相手は絵里しかいなかった。
そして、もしかしたら、もう絵里に会うこともないと思うと、絵里に聞いてほしいと思った。彼女とのけじめをつけるためにも・・・
「絵里さん。アキコは僕がいつになっても絵里さんを忘れられないことを知っていたんです。」
「いつも一人になると、あなたと過ごした時間を思い出していた。白馬の夜から・・・」
国立にアキコが帰った前日、リョウヘイはアキコのつけているコロンの香りに絵里を思い、たまらずにアキコを抱きしめたことを思い出しながら続けた。
「10年以上たつのに、自分でわからなくなりました。
自分が求めているものがなんだったのか・・・あなたへの思いが愛なのか・・・」
「高岡さん・・・」
絵里は、自分の心臓の激しい鼓動がリョウヘイに気づかれないかと心配した。
「一生 アキコとコウヘイを守ってやらなければ、と頭ではわかってるんです」
しかし、そうやって、リョウヘイが家族を大事にしようと頑張れば頑張るほど、アキコを苦しめてきた。
絵里を忘れられないまま、嘘をついたままでいることが。
「高岡さん。あなたとのことで私は娘の心を傷つけました。私の犯した罪はちゃんと私に帰ってきたんです。」
「娘の今回のことは本当に苦しかった。毎日 自分のことを責めました。やっと 娘が私に心を開いてくれるようになって本当に嬉しかった」
絵里も自分の思いをそのままリョウヘイに伝えた。
「お子さんに、娘の様なさみしい思いをさせないで。」
リョウヘイは下を向いて、わかってます。
と小さく言う。まるで絵里のことばを、ありふれた建前だと責めているようだった。
あなたの心の中の叫びが聞きたいんだと言っているようだった。
少し間をおいて唐突にリョウヘイが絵里に尋ねた。
「絵里さんにとっては僕とのことはもう昔のことなんですか?」
絵里は、どう答えていいのか黙ってしまった
リョウヘイのまっすぐな気持ちを告げられて動揺した。
自分にとってはリョウヘイとのことは本当に昔のことなんだろうか・・・
絵里はわかっていた。
自分の目の前の、不器用なこの男の心を分かってあげられるのは自分しかいないと言うことを。
また、孤独な自分をありのまま理解してくれるのもリョウヘイだけだと思った。
絵里は目をつぶった。
先週 初めて一緒に由香とカウンセリングに来て主治医と三人で楽しく会話できたことを思い出していた。
絵里を見て話す、由香の嬉しそうな顔を思った。
由香・・・・・・
絵里は膝に置いた手が震えているのを隠すためにぎゅっと握りなおした。
顔をあげ、絵里はリョウヘイの目をまっすぐ見て言った。
「あなたとのことは、もう終わったことです・・・」
二人はレストランを出て病院の外に出た。
道路までつづく歩道の両脇の桜並木を歩いた。
桜のつぼみが膨らみかけていた。
この分だと来週あたりには満開になるだろう。
絵里はリョウヘイに会釈をして駅の方に向かって歩いていった。
そしてリョウヘイは絵里の背中を見送りながら駐車場に向かって歩き出す。
国立で、自分を待つコウヘイを思いながら・・・
完
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聖域 ⑦
http://juno0501.exblog.jp/4806842/
2007-02-22T21:35:29+09:00
2007-02-22T23:44:46+09:00
2007-02-22T21:35:29+09:00
juno0501
聖域 ⑦
アキコは大学時代、エジンバラに夏休み滞在したこともあり、今回のイギリス赴任は本当に楽しみだった。
ロンドンで暮らしている友人もいたし、何より、フィンランドのように、日常会話に困ることが全くない分だけ気疲れがなかった。
ある朝 東京の実家の母親から電話がかかってきた。
新しい任地が決まるとやはり心配していつもかけてくれるのだった。
二人の体のことを気遣い、実家のみんなも元気だと告げた。
「そうそう、チハルがなんと、結婚するみたいよ!」チハルはアキコと仲のいい母方の従妹だった。
全く男っ気がなく身長も170センチのりっぱな体格のチハルは、大学を卒業して婦人警官になった。
そのとき、チハルの母は「そんなにたくましくならなくても・・・」となげいたものだった。アキコより5歳年下だが、小さい頃から二人は姉妹のように育ったのだった。
アキコは自分のことのように喜んだ。
「来週、お相手を連れてくるみたいよ。義兄さんが今からおちつかないって言ってたわ。思い出すわね。あなたがリョウヘイさんをはじめて連れて見えたときもちょうど今頃だったわよね・・・お父さんもあの時は確かに落ち着きがなかったわ・・・」
母親の言葉を聞いているうちに、アキコの脳裏にリョウヘイのパスポートの日付が思い浮かんだ。
リョウヘイをはじめて国立の実家に連れて行ったのは三月の三連休だったことが思い出された。
あの日付は、三連休・・・その日に韓国に行ったの?
なんのために?確か 仕事があるような話をしていた・・・
仕事で韓国へ行ったの?
彼の仕事で韓国に接点があったなんて思えない。
アキコは電話の向こうで話し続ける母親の声は全く聞こえてなかった。
いろんなことを一瞬に考えていた。
絵里さん?絵里さんと一緒だったの?
アキコは青ざめた顔で母親の声をさえぎるように受話器を置いた。
そう、確かにその頃絵里さんも韓国に行ったはず・・・
同じ日に?
二人は一緒だったってこと!?
アキコはまだ片付けの済んでいない広いリビングで何時間も座り込んでいた。
確かに絵里さんはちょうどあの頃、韓国に一人旅をすると聞いた。
ただ、それをなぜリョウヘイが知っていたのか、何かの折りに彼にそのことを私が話したのだろうか・・・
それとも絵里さんが彼を誘ったんだろうか?
あの絵里さんが?まさか!
リョウヘイは自分の両親に会いにくる直前まで彼女と二人で韓国に居たというのか、、、、
アキコは湧き出てくるいろんな疑問を肯定したり否定したりを繰り返した。
ただ確信したことがあった。
アキコが、今までうっすらと感じてきた、彼のこころの中の、けして立ち入れない領域、そこにいたのは絵里さんだったんだ、、、、、
夜になっていた。何もしないうちに夜になっていた。
今日 一日どうやってすごしたのかもよく覚えていなかった。
リョウヘイが帰宅した。
あかりのついてないリビングの窓際に座り込んでいるアキコを見て、リョウヘイは心配そうに声をかける。
「・・・どうかしたのか?・・・」その声が聞こえているのかいないのかアキコは動こうともしなかった。
リビングの明かりをつけるとリョウヘイは無表情のアキコを見てもう一度声をかける。
「大丈夫かい?」
リョウヘイはアキコの前に腰を下ろし、顔を覗き込んだ。
「・・・絵里さんと一緒だったの?」
リョウヘイは何のことを聞かれたのかアキコを見る。
「私の実家に来るその日まで韓国で絵里さんと一緒だったの・・・?」
それを聞いてリョウヘイは声を出すことができなかった。
「いつからなの!?麻布で食事をした時から!?二人であなたの看病に行ったとき!?」アキコは抑えることができない感情をそのままリョウヘイにぶつけた。
リョウヘイはしばらく黙ってアキコの質問を聞いていたが、しばらくすると口を開いた。
「もう 終わったんだ・・・」
終わった?終わったって何?
絵里さんとの関係はまちがいなくあったってこと?
アキコはすべてが間違い、自分の勘違いだと思いたかったが、リョウヘイの一言でそれが現実のものであることに打ちのめされた。
心の底で、明るく否定してほしかったのにリョウヘイのことばがアキコの耳に届いたとき、アキコは全身から力が抜けていくようだった。
「すまなかった・・・でも 本当に終わったんだ。」
問いただそうとすれば、いろいろなことを確かめたい、聞きたい。いつから二人がつきあっていたのか?結婚式の、チャペルの外で二人は何を話していたの?・・・
でも今 すべてを聞くことはアキコには耐えられなかった。
自分たちはどうなるんだろう・・・
私はどうしたいんだろう・・・
自分の目の前で何も言わずに椅子にすわるリョウヘイを見ることができず、アキコは窓際にもたれていた。
☆
翌朝、目が覚めるとリョウヘイはすでに会社に行った後だった。
アキコは今まで、どんな時もリョウヘイの朝の食事の支度は結婚してから欠かしたことがなかった。
無理にそうしようと思ってやってきたのではなく、アキコ自身がそういった家事が好きだったのだ。
愛する夫の身の回りの世話をすることを幸せに思っていたのだ。
朝食を食べずに出かけさせてしまったリョウヘイを思いながらベッドの中で昨日のことをまた思い出してしまった。
現実なんだ、夢じゃなかったんだ・・・
一日 経ってアキコは冷静に考えようとした。
ロンドンに赴任してからまだ10日ほどしかたってなかったが、そのあたりから体調が悪かった。
頭が重いこともあったが、昨日のことを思い出して、また気分が悪くなってきた。
昨日 リョウヘイは絵里との関係が終わったと言った。
自分と知り合う、もっと前から始まったことだと話した。
絵里さんはリョウヘイと不倫していたんだ・・・。
じゃあ 離婚したのはそれが原因だったのだろうか・・・
絵里さん・・・自分にとっては姉のような頼れる存在だった。
結婚しても仕事もきちんと続け、優しいご主人とかわいいお嬢さんの中で幸せにくらしている先輩と思っていた。
控えめだけど、自分の下らない悩みをいつもまじめに聞いてくれた。
結婚しても絵里のように仕事を続けて行く自分を想像したこともあった。
その絵里が自分の夫と関係を持っていた・・・
今はまぎれもない現実となってしまったことを認めざるを得なかった。
「終わったこと」とリョウヘイは言った。
本当に終わっているのだろうか?
彼の心を占めているのはいまだに自分ではなく絵里なのではないだろうか・・・
そう考えれば考えるほどアキコは切なくなってきた。
自分との結婚式の日まで絵里に心を残している夫。
自分の存在は夫にとっては何だったんだろう・・・
アキコは自問自答しながら、同じ答えを反芻しながらまた眠りにおちた。
頭が重く疲れていた。
リョウヘイは夜 帰宅するとアキコに「話をしよう」と寝室に来た。
だがアキコは何も聞きたくなかった。
翌朝も目が覚めるとリョウヘイが出かけた後だった。
あの日以来 アキコは一日中気分がすぐれずベッドに横になっていることが多かった。
翌日 アキコはロンドン在住の大学時代の友人のサトミに電話し、病院に付き添ってもらった。
医師にずっと気分がすぐれず頭が重いこと、一日中寝たりおきたりしていることを伝えた。いくつかの質問をされ、血液と尿検査をした。
その場で待っていると、医師がにこにこしながら戻ってきた。
「おめでとう!妊娠です。」心配そうに待っていてくれたサトミにそれを無表情につげるアキコ。
アキコはどうしていいのかわからなかった。
うれしそうな表情をしないアキコをいぶかってサトミが心配して声をかける。
「どうしたっていうの?待ちに待ったベビーよ!」
サトミの両手がアキコのほほを撫でた時、いきなりアキコはぽろぽろと涙を流した。
サトミはけして嬉し涙ではない様子を察してアキコに問いかけた。
「どうしたの?何があったの?」
ロンドン郊外のサトミの家でアキコは今の自分の気持ちを話し始めた。
サトミは紅茶を入れながらアキコの話をじっと聞いていた。
アキコは最初興奮気味だったが、すぐに落ち着いて自分でもどうしていいかわからない、どうしたいのかも分らないと言った。
アキコの話が済むとサトミが尋ねた。
「ねえ まさか生もうかどうしようか迷っているなんて言わないよね?」
アキコは何も答えなかった。
「ばっかじゃないの?!よく考えてみて!リョウヘイさんのはもうとっくに終わってたのよ!それもあなたと結婚する前に!」
「あなたとつき会ってる時に相手の女の人と会ったのかもしれないけど、それはあなたとの結婚で確かに終わったのよ?」
「それで、アキコ 離婚でもするつもり?ベビーがやっとできたのに?」
「アキコはプライドが高かったからねー。それと戦ってるんだよねー。うんうん、私はわかってあげられるわよ」
サトミはアキコとは長いつきあいである。
遠慮のない言い方ながら暖かくアキコに同調しながら沈んでいるアキコを励ました。
「ねえ。もう終わったってリョウヘイさんが言ってるんだから信じてあげなきゃ・・・まだその女の人を好きだったとしたらあなたをだまし続けてるってことよね。リョウヘイさんってすっごく誠実な人だと思うんだけど、その言葉に嘘はないと思うわよ・・・」
サトミと話をし、慰められているうちに少しずつアキコも落ち着いてきた。
「アキコは、リョウヘイさんのすべてを自分のものにしなきゃ気がすまないのよね。・・・でも 他人同士が結婚してどんなにウマがあったとしても相手のすべてを分かりたいなんて無理じゃないかな?」
サトミ自身はイギリス人と3年間の結婚生活の末 去年離婚したのだった。
以前も誰かにおなじことを言われた。
でもリョウヘイの心の奥底に自分ではなく絵里の影を感じて不安に思ったのだ・・・
それは考えすぎなんだろうか・・・
二人で一緒に軽い夕食をとり、サトミはアキコを車で家まで送ってくれた。
ここ何日間の体調の悪さが妊娠のせいだったのかと思うと、まだ複雑な気持ちだったが、少しずつ気持をおちつけようとした。
電話が鳴った。
国立の実家の母親だった。
何日かまえの電話で様子がおかしいまま切れてしまい、その後、何回か電話をしても留守だったので(アキコが電話を取らなかっただけなのだが)心配して今日も何度かかけたのだと言った。
母親は何かあったのかと不安げにアキコに聞いた。
「変わりないわよ。ごめんね。ちょっと体調悪くて・・」
「どこが悪いの?病院に行ったの?」
「うん、今日 サトミに連れてってもらった」
「それでどうだったの?!」
母親は段々声が大きくなってきた。
「大丈夫・・・おかあさん・・・私・・赤ちゃんが出来た・・・・」
そう言うと返事がしばらくなかった。
アキコが受話器を耳に当てなおすと、
「おめでとう・・・・あきこ、本当におめでとう・・・」母親は泣いていた。
結婚して6年になろうとして、やっと赤ちゃんができた。
母親は最初の一、二年目こそ「まだなの?」と聞いていたが最近はアキコに気を遣って赤ちゃんの話をあえてしないようにしてくれていた。
アキコ自身がそんな気遣いを十分知っていたので母親が泣いているのを電話越しに聞いて自分の妊娠が大きな親孝行なのだと感じた。
☆
リョウヘイが帰宅した。
久々にアキコは夕食を作って待っていた。
最近 買い物もしなかったので食材がほとんどなかったが、パイ生地を使ってサーモンを巻いたり、トマトとバジルでサラダを作ったり、リョウヘイの好きなビールをストッカーから出してまとめて冷蔵庫で冷やしておいた。
リョウヘイは久々に妻が以前のように夕食を作って待ってくれていることに驚いたが、素直に「ありがとう」と言った。
「心配かけてごめん・・・」
アキコは照れくさくてリョウヘイを見ずに言った。
「俺の方こそごめん、いやな思いさせてしまって」
リョウヘイがそう言うとアキコは振り向き言った
「リョウヘイさん。私と結婚してよかったと思う?」アキコに突然そう言われ リョウヘイは驚いた。
「うん 思うよ」
「ほんとに?」
いつも こんなふうな会話をしないアキコだったが、今日は言えた。
「じゃあ 私と、おなかの赤ちゃんをこれからも一生大事にしてね!」
「え?!」リョウヘイは少し間をおいてすぐに聞き返した。
アキコがうなづくとリョウヘイは叫んだ。
「やった!アキコ ありがとう!」
アキコはリョウヘイの嬉しそうな笑顔を見て、もう終わったことなんだ・・・
もう心配する必要ないんだ・・・
これからは3人で幸せになれる!心の中でそう繰り返した。
幸せな日々が続いた。
日に日に大きくなるおなかを見ながらアキコも満ち足りた毎日だった。
ロンドンの生活にすぐに馴染めたこともあったが、自分の妊娠でリョウヘイとの絆が深まったように感じた。
リョウヘイは普段は口数の少ない男だったがアキコの妊娠を機に少し饒舌になった。
周りの友人がうらやましがるほど、今まで以上にアキコを気遣った。
晴れた日曜日はハイドパークを散歩した。
そんな時リョウヘイはアキコの手を握りながら歩いた。
国立の母親は、アキコの出産のときはロンドンに来て世話をするから!と大分前から宣言していた。
日本で言えば高齢出産ではあったが、ここロンドンでは全くめづらしいことではないと友人達が教えてくれた。
臨月になり、いよいよお腹が前にせり出してくるとリョウヘイも、「Xデーは会社を休んで待機だね」と笑った。
アキコは自分のお腹の中の元気に動くこの子のおかげでリョウヘイがまぎれもなく自分のものになったと感じていた。
その日、初産だったが、何の心配もなく赤ん坊は生まれた。
3300グラムの元気な男の子だった。
リョウヘイは生まれたての赤ん坊をこわごわと抱きながらアキコにことばをかけた。
「アキコ、この家族を幸せにするよ・・・」
アキコは涙ぐんだ。
コウヘイと名づけられたその子は元気そのものだった。
リョウヘイも忙しい平日もなるべく仕事を早く切り上げて帰宅し、まずアキコの手助けをした。
もともとマメで何でも一人でこなせる男だったのでアキコは遠慮なくリョウヘイを使った。コウヘイの世話も最初は慣れなかったものの今では大泣きしたら、リョウヘイが抱けばすぐに泣き止むほどになった。
土日はロンドン周辺のいくつもある公園に行き三人で遊んだ。
コウヘイは早くも完璧なパパっ子だった。そんなコウヘイを見るのもアキコには幸せだった。
リョウヘイも小さなコウヘイを抱っこして時間があれば一緒に遊んだ。
「昨日 初めてしゃべった言葉がやっぱり‘パパ‘だったわ!」
ロンドンの友人に囲まれてアキコはわざとむくれた顔で言った。
「ご主人も本当にコウヘイ君がかわいいのよねー。見てて笑っちゃうくらいよね。」
「それなのに、妊娠がわかったときにこの人ったら、死にそうな顔してたのよねー」
サトミがわざと大声で言う。
そんな笑いの渦の中にいる自分をアキコは幸せだと改めて感じた。
コウヘイが二歳になったころ、転勤の辞令が降りた。
今度は中国だった。
今回の赴任は中国で現地法人をたちあげる責任者としての仕事のため、リョウヘイの毎日は相当忙しくなることを想像させた。
これまで流浪の民のように次から次へと転勤してきたが、おそらく今回の中国の仕事がうまく収まれば日本に戻れると上司に言われたとアキコに告げた。
一瞬 「あなたは日本に戻りたいの?」と心の中でつぶやいたが、アキコは中国に転勤するための準備を始めた。
アキコは海外での生活はへっちゃらだった。
生来 積極的で誰とでもすぐに親しくなれる性格からどこへ行っても寂しい思いはしなかった。
コウヘイが生まれてからはまた別のネットワークが増え外国暮らしに不安を感じたことなどはなかった。
中国に行くとリョウヘイはその日から忙しくなった。
上海の高級住宅街の広い一戸建てに住み、リョウヘイは、すこしずつおしゃべりを始めたコウヘイに毎朝、自宅を出るときにキスをした。
するとコウヘイが大泣きを始め、アキコが、パパに向かって泣きながら手をのばすコウヘイをなだめる・・・
それが毎朝の儀式だった。
アキコは中国の市場の猥雑さや屋台の喧騒を楽しんだ。
とてつもなく広い道路にありのように大挙して過ぎ去る自転車の群れがアキコにも中国のパワーを感じさせた。
土日は三人で中国の観光地を巡った。
コウヘイはいつも昼過ぎに疲れてぐずり、リョウヘイの広くたくましい胸の中で安心したように眠った。
上海に戻ると外国人客を意識したしゃれたレストランやバーもあり、会社の親しい家族同士で子供を預けあって夫婦だけで出かけることもあった。
ただ、他の家族ほど、二人で出かけることは少なく、リョウヘイはひたすらコウヘイと一緒にすごしたがったので、どちらかと言うと、預ける側というよりは預かる側になるほうが多かった。
アキコはそれが少し不満ではあったが、3-4才の子供たちの中で一緒に遊ぶコウヘイを微笑みながら見ているリョウヘイを見るのも好きだった。
「こんなに子供好きだったなんて・・・」
アキコはリョウヘイを見て何度もそう思った。
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聖域 ⑥
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2007-02-22T21:34:00+09:00
2007-02-22T23:44:21+09:00
2007-02-22T21:34:00+09:00
juno0501
聖域 ⑥
由香は少しづつ落ち着いてきたと夫から聞いた。
女とは一切口をきかなかったが夫に何度も言われたらしく女の用意する食事を部屋に運ぶとちゃんと食べるようになった。
由香の部屋のドアも開け放してあり、女も何かと口実をつけて「洗濯物ここに置いとくわよ」とか「雑誌でも見る?」などと由香の部屋には何度も出入りした。
声をかけても一切こちらも見ず、ただ窓の外を眺めているだけだったが、夫に懇願されたせいか食事だけはちゃんと食べてくれている・・・そう思うだけで女は嬉しかった。
私と由香には深い溝ができてしまっているけれど、夫自身も一生懸命、母親との溝をうめようと由香を心からかわいがってくれてきたのだ。
夫には感謝しても仕切れないわ・・・女はなんどもそう思った。
この家の近くに一人で住む年老いた母親には心配させないように、由香が体調をくずして家にいること、自分が休暇を申請して由香の世話をしていることなどを簡単に話してあった。
ただ足腰は弱っても察しのいい母親は由香が今 大変なんだと感じているらしかったが、
何も聞かず、「そうなの・・・あなた、お料理が得意じゃないのに由香にちゃんとおいしくて栄養のあるもの 作ってあげてるの?」そう言って微笑んだ。
年老いた母親は、手先はまだ器用で毎日編み物をしたり、袋物を縫ったりしている。
最近では区でやっている講座で木目込み人形を作ったとみごとな対の雛人形を見せてくれた。
「この人形の顔を見ると由香の小さい頃を思い出すのよ・・・」
そう言ってふっくらした人形の頬をなぞった。
私のせいでこの母親の一番の楽しみ、愛する孫に得意の料理を振る舞い何度もおかわりしてもらえる幸せを奪ってしまった。
ある土曜日 母親に呼ばれ女は久々に実家に出向いた。
土日は夫も仕事が休みのため、女も食材や身の回りのものなどの買い物を土日にまとめてするようにしていたので、その帰りに寄ってみた。
母親は「二日で編めたわ・・・」といいながら肩をたたきながら大判の、温かみのある卵色の肩掛けを女に手渡した。
「由香が風邪ひくといけないからね。」
ありがたかった。
翌日 女はいつものように家に行き、掃除、洗濯を始めた。
由香の部屋に行き、遠慮がちに
「由香、ばあちゃんがね、、由香にって。おばあちゃん 由香が風邪ひかないかって心配してたわよ・・・」
そう言って手編みの肩掛けを由香のベッドに置き、女は部屋を出た。
相変わらず由香とは一言も会話はできないが、最初のころに比べたら、顔色がよくなっただけ心強かった。
女が部屋を出て行くと由香は大好きな祖母の手編みの、卵色の肩掛けを手にとり広げた。
それを肩にはおるとじんわりと暖かかった。
由香はその肩掛けに顔をうずめて声を出さずに泣いた。
三週間が過ぎた。
由香は頑なに女と会話をすることを避けていたが、毎日由香とすごせる幸せをかみ締めていた。
夫の話では夜はリビングに下りてきて少し話す時間があると聞いた。
病院の先生から心療内科に通院してカウンセリングを勧められていて今度一緒に行こうという話しをしたらうなづいたと言っていた。
「由香も元のように元気になりたいと思ってる!」
そう思うだけで女はうれしかった。
数日後、夫は休みを取り、由香と二人で病院に行った。
カウンセリングを予約していたので、それを受けに行ったのだった。
女は家で食事の支度をしながら待っていた。
昼過ぎに帰宅すると夫から由香は大分 落ち着いたように見えるがまだ要注意と先生に言われたときかされた。
また来週予約し、しばらくは少しずつ話を聞いていくとのことだった。
そして、女にも由香の母親として一人で病院に来て欲しいといわれたと。
女はそれを聞いてすぐ主治医の担当の日を病院に確認し、一番早い日を予約した。
心療内科の予約の日、女は由香を夫に託し、一人で病院を訪れた。
主治医はすでに由香とは2回ほどカウンセリングをしており、その内容を簡単に女に伝えた。
たまに専門用語を交えながらも分かり易く丁寧に話してくれた。
夫が言っていたとおり、信頼感を与えてくれる医師だった。
医師は由香がアメリカの大学で心理学を専攻していたことを本人から聞いたのですが・・・と言い、本人も今の自分の状況を頭ではしっかりわかっていること、今の自分が嫌でたまらない、変わりたいと強く思っていることを感じていると女に伝えた。
医師は女に彼女自身についていくつか質問をしていくうちに、今 介護休暇をとり、毎日娘の世話をしていることや、自分が由香に対して抱いている思いなどを正直に話すのを聞いていくうちに、この母親が本気で娘に向き合おうとしていることを確信した。
「お母さん、大丈夫です。由香さんはきっと元気を取り戻します。おわかりでしょうが、お母さんを拒絶しているのは実は真逆で、母親への強い思いです。これからも由香さんを見守ってあげて下さい。」
女は医師に勇気づけられてカウンセリング室を出た。
部屋を出たときに、彼女を見て立ち止まる男がいた。
視線を感じて振り返るとそこにリョウヘイがいた。
「・・・絵里さん?お久しぶりです・・・」
10年ぶりの再会だった。
二人はしばらく無言でその場にたちすくんでいた。
男は女が心療内科のカウンセリング室から出てきたことを見て、尋ねていいものかどうか口ごもった。
「娘がこちらに通院してるんです。」
離婚してご主人が引き取ったことまでは覚えていたが、心療内科に親子で通っているという事実が何か深い悩みを抱えていることを想像させた。
二人は何も言わず、ロビーまで続く病院の長い廊下を並んで歩き出した。
「父が入院していて今日はその見舞いで来たんです。」
10年前にスキー場で出会い何度も逢瀬を重ねたことも二人にとってはずいぶん昔の事のように思われた。
体だけを求めてむさぼりあった日々を男は思い出していた。
その結果彼女は離婚し、今 疲れた顔で娘のことで深い悩みを抱えている。
「アキコさんはお元気ですか?」
「・・・ええ元気です」
女は結婚式以来アキコと一度も会っていなかった。
というより、結婚の挨拶状が一度きただけで、電話も年賀状も来ないので、今 どこでどうしているのか、元気なのかを心の片隅で気にはしていた。
それは男があえて自分あての連絡を止めているのだろうと考えていた。
病院のロビーで女は清算のカウンターに向かうため男に会釈して別れた。
考えてみれば東京のどこかで生きていて、ふとこんな風に偶然出あったことが男にとっては不思議でもなく当然のことのように感じられた。
男は女の負った罰を感じながら、自分が何もできない、してあげられないことが残念だった。
正直に言えば、この女と話したいと思った。
体を求めてではなく、女の話を聞きすべて受け止めたいと思った。
自分の中の空虚な部分を、あの包み込んでくれる暖かさで埋めてほしいとも思った。
しかし、今、さっき会ったあの疲れた表情を見て男は心の中で振り払い病院の駐車場に向かった。
女は家に戻ると夫に先生とのカウンセリングの内容を詳しく報告した。
夫も「あせらないでやって行こう」と言ってくれた。
すぐには溝が埋められないことは覚悟していたが、女はあらためて自分を責めていた。
でも、今は私が前向きにならなきゃ!と女は心に渇を入れた。
夕方会社からの電話で夫は出かけていった。
今開発中のものを製品化できるかどうかの会議とのことだった。
由香がトイレに降りて来たのと入れ替わりに女は二階の由香の部屋に行き、洗濯物をしまい、ベッドを整えた。
枕カバーを取り替えようとしたとき、枕の下に小瓶をみつけた。
それはまだ封をあけてない睡眠薬の瓶だった・・・それを震えながら、呆然と手にもってたちすくんでいると由香が後ろで叫んだ。
「触らないで!それを私に返して!」
すごい勢いで母親に飛び掛ってきた。
「由香!死ぬなんて考えないで!ママをどんなににくんでもいい!憎み続けていいから自殺なんて考えないで!」
「放っといてよ!私のことなんか何も知らないくせに今更母親面しないで!」
二人は睡眠薬の小瓶を取り合って、もみ合いになった。
由香は強い力で、ものすごい形相で女の手の中の睡眠薬の瓶を取り返そうと必死だった。
その小瓶だけが今の由香の唯一の心のよりどころのように。
「由香、お願い!お願いだから、死ぬなんで考えちゃだめ・・・」
二人とも涙を流していた。
由香は力尽きたように崩れ落ち、泣きじゃくった。
女も由香を抱きしめながら嗚咽した。
「由香ごめんね、今まで傍にいてあげられなくてごめん・・・」
女の胸の中できつく抱きしめられながら、由香は子供のように泣き続けた。
アキコは国立の実家で考え事をしていた。
5歳になった息子のコウヘイが両親と遊ぶのを見ながら考えていた。
数日前コウヘイの幼稚園が冬休みに入るとすぐに夫(リョウヘイ)に置手紙を残して実家に戻ってきていた。
アキコは10年前を思い出していた。
リョウヘイと結婚して半年後にニューヨークに転勤が決まり、あわただしく飛び立った。
もともとリョウヘイの所属している海外事業部のものには海外勤務はつきものだったのでアキコも結婚を機に仕事を辞めた。
ニューヨークに三年、北欧、イギリス、そして中国で現地法人を立ち上げて去年10年ぶりに日本に戻ってきた。
結婚式の日、チャペルの外でリョウヘイと絵里の会話の一端を聞き、二人に何があったのだろうと思ったが、慣れない海外生活に順応するためにそれで精一杯だった。
結婚が決まった時も会社の中で、仕事のできるリョウヘイを射止めたことが同僚の女性たちの間で相当うらやましがられ、アキコは有頂天になっていた。
実際 結婚してみると、リョウヘイはやさしく、独身生活が長かったせいかリョウヘイはまったく妻の手をわずらわせることのない夫だった。
身の回りのことも妻のアキコがもっと世話を焼きたがっても「大丈夫だよ。自分でできるから」といつも笑顔で言った。
海外生活の中で、現地の日本人駐在員の妻たちともたくさん知り合ったが、その中でもリョウヘイは自慢できる夫だったし、もっといろいろ自分に委ねてほしいというようなグチを友人達にこぼしても、まわりからはただのノロケと取られるのがオチだった。
絵里と夫に何があったのかという思いが心の片隅にあっても、今、絵里とは無関係の海外でリョウヘイが自分の夫として暮らしていることは事実であり、自分にそれを言い聞かせて考えないようにしていた。
なかなか子供ができなかったが、リョウヘイは海外は慣れたもので、不慣れなアキコを伴っていろいろなところに連れて行ってくれた。
アキコは幸せだった。
ただ、一緒に生活をしていくうちに、リョウヘイの心の一番奥には自分の入り込めない部分があるように感じていた。
一流企業のエリートで誰がみても男らしく誠実なリョウヘイ。
自分に対しても思いやりのあるこの男の奥底には一つトビラが閉まっていていつも鍵がかかっているような、そんな感覚だった。
「この人は私と結婚して幸せだろうか・・・」そう思うこともあった。
そんな感覚はなかなか説明しにくく、友人に話しても「それは誰にでもあることよ」とか「心を全部 共有できるなんて無理よ」「あなたは、あのご主人にこれ以上のことを求めるなんて贅沢よ!」などと一笑に付された。
「そんなものか・・・」
アキコは考えすぎていたことに苦笑した。
イギリスに転勤が決まった時、いつもは家のことはアキコが担当し、彼の身の回りのものは本来なら全部彼自身でやるのだが、辞令が降りてから現地に行く日まで日にちがないため、少しずつ夫の荷物もアキコが整理し始めようと考えた。書斎に入った。リョウヘイは夜、食事が終わると毎日必ず書斎で一人何か考え事をしている。そういったところもアキコにとっては少し寂しさを感じるところだったのだが、友人の言葉を思い返して苦笑した。机の上のたくさんの書類の山や読みかけの本は触らないほうがいいわね・・・と思いながら、本棚にある書物を箱に詰め始めた。転勤は宿命なので、二人ともものを増やさないようにしてきた。洋服なども流行にあまりとらわれない上質のものを数点用意してそれ以外はあまり買わないようにしてきた。本棚の一つのコーナーに韓国関係の書物や学生時代に自分で撮った韓国でのアルバムが何冊もあった。なぜかリョウヘイはいつどこへ行ってもこれらは処分せず携えていた。アキコ自身は冬ソナにはまって韓国語教室に通ったこともあったが、リョウヘイに韓国の話を振ってもあまり話しに乗ってくれなかった。
韓国語教室・・・そこで絵里さんと出会ったんだわ・・・結婚式の日に二人の様子をみて胸騒ぎを覚え、それ以降 あえて絵里とは連絡をとっていなかった。
書斎の机の引き出しを開けたとき、パスポートが奥に見えた。
いつも自分で管理していて一切さわることもなかったが、単純な気持ちでリョウヘイのパスポートを手にしてパラパラとめくった。
パスポートをめくると韓国の入国印が押されてあることに気づいた。
「韓国?この年は たしか結婚した年よね・・・」日付から自分たちがすでに付き合っていたころになるのだろうが、リョウヘイから韓国に行った話しは聞いた覚えがなかった。独身時代 ふらっと一人でよく旅に出かけたと言っていたから多分 それかしら・・・
どこかに引っかかる思いはあったが、パスポートの最初のページの、今よりかなり若い夫の写真をしばらくながめ、くすっと笑いながら、またもとの引き出しにしまい、荷物を詰め込み始めた。
夜 遅くにリョウヘイが帰宅した。書斎でアキコが自分の荷物を詰め込んでいることに一瞬 驚いたが、アキコに声をかけた。
アキコはリョウヘイに気づくと手を止めて
「あ、お帰りなさい。少しづつこの部屋の荷物も整理しておいた方がいいと思って・・・」と言った。
「ありがとう、でも会社の書類なんかもおきっぱなしだから後は自分でやるよ」
「そう?でもあまり日がないし、あなたも忙しいでしょうから、と思って。そうそうあなたのパスポートの写真、ほんとに若いわね!」そう茶化しながらリョウヘイにウィンクした。
アキコは軽く食事をする?とリョウヘイに聞き、書斎を出てキッチンに行った。
しばらく書斎にいた後、リョウヘイが着替えをしてキッチンに来た。
アキコは結婚前から料理の腕前は確かだった。それだけではなく、家事全般 きびきびとこなし、不慣れな海外生活の中でも順応しようと努力した。
「今度はイギリスか・・・」ワインを飲みながらアキコが言う。
ニューヨークに3年、北欧に2年、今度はヨーロッパに販路を拡大するために、イギリスに行くのだ。
「日本がなつかしいだろ?」
リョウヘイはアキコの作った、オードブルをつまみ、ワインを飲みながら言う。
そう言われてアキコは、むしろ自分たちが海外にいられることがアキコに不思議な安心感を与えていることに気づいていたが、それはリョウヘイには言わずに
「今度はイギリス・・・フィンランドの言葉には苦労したけど、今度は少し気が楽よね」
二人は英語には困らなかったが、なるべく現地の言葉を覚えようといつも努力した。
休日の夜は、知り合った現地の日本人の家族から言葉を教えてもらったりしたが、アキコはリョウヘイとのその時間がとても楽しいものだった。
アキコは物怖じしない性格で、すぐに誰とでも友達になることができた。
リョウヘイも長い海外生活の中で、そんなアキコの明るい性格にはどれほど助けられただろう。
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聖域 ⑤
http://juno0501.exblog.jp/4806817/
2007-02-22T21:32:43+09:00
2007-02-22T23:44:10+09:00
2007-02-22T21:32:43+09:00
juno0501
聖域 ⑤
女の日常はいつもとかわりなく過ぎて行った。
離婚する前も仕事に手を抜くことはしなかったが、一人になってから 女の毎日は今まで以上に膨大な量の仕事を効率よくこなすことで費やされた。
女は仕事が好きだった。
同期の男性の職員よりも明らかに有能だった。
どれだけ仕事が忙しくても、一人になってからは、帰宅時間を気にすることなく何時間でも残業した。
次第に上司からも様々な重要な案件を相談され判断を仰がれたり、役職こそ課長補佐だったが、彼女の職務上の知識やアイディアを生かす機会も多くなってきた。
一人暮らしには最初から抵抗なく馴染んだ。
由香の声のない寂しさを時々感じることはあっても、女はつくづく自分には一人暮らしがむいているのだと感じていた。
職場では女が離婚したらしいという噂がながれたが、もともと女が開けっぴろげな性格ではなく、むしろどこか気軽に声をかけられる雰囲気の性格ではなかったので、苗字を変えてなかったこともあり、本当に離婚したのか、なぜ離婚したのかはほとんどのものが知らなかった。
数少ない友人を大事にし、端からみれば狭い世界の中で生きていた。
もともと一人で何かするほうが気楽な性格だったせいか、むしろ大勢でいることが苦手な性格だったせいか、職場の宴会も失礼のない程度にしか参加しなかったし、休日は一人で美術館に行ったり、小旅行に行ったりして楽しんだ。
女は 夜 たまに一人で酒を飲んだりすると、もう何年も前のこと、男との逢瀬を思い出すことがあった。
白馬で出会い、自分でも知らない世界を覗いたこと。
愛を語るわけではなく二人ともただ時間を惜しむように貪った日々。
自分のしている行動が世間の常識からすれば罰があたることとはっきりわかっていても止めることができなかった。
むしろ、男が海外に転勤したり、アキコとの結婚が決まったり、そういったきっかけのおかげで関係が終わった。
そのことが女には自分の弱さを認識させていた。
体の相性が合うだけではなく男と一緒にすごした時の、不思議な充足感、似たもの同士が体を寄せ合うような、本当の自分でいられるような安心感がいつもあった。
もうあんな男とは一生 出会うことはないだろう・・・ある意味 自分のかたわれのような相手だったかも知れないと思う。
アメリカに行った別れた夫からは時々 由香と写った写真と手紙が送られてきた。
アメリカのハイスクールでは最初 英語でだいぶ苦労したようだが半年もしないうちに生活にも慣れたようだった。
女はそのつど返事を書き、由香にあてた手紙も添えてアメリカに送った。
由香からは一度も返事はなかった。
夫も女を気遣って、手紙には「ママに会いたいといっています。」と書いてあったが、女は由香が自分に対しての否定的な感情をまだもちつづけていることはわかっていた。
「当たり前よね・・・」
女はため息をつきながら写真を見る。
少しずつ大人っぽくなっていく由香。
アメリカの大学で心理学の勉強をしていると手紙で知った。
大人びたアメリカの友人たちの中で精一杯 背伸びをしてお化粧をした由香の写真をいつまでも見ていた。
母親似の切れ長の目が、目鼻のはっきりしたクラスメートの中では地味に見えたが、大人になりきる前のピュアな美しさがあった。
由香の20歳の誕生日に女は手紙と真珠のネックレスを送った。
夫から丁寧にお礼の手紙が来て、由香は日本の成人式には出席しないつもりであることや着物も着ないかわりに父親に中古の車をねだったことなどが綴ってあった。
何枚かの写真を見る限り 由香はアメリカで成長し元気に生活しているようだった。
由香が大学を卒業した翌年、夫が春に日本支社に戻ってくると伝えてきた。
IT関連企業で華々しく成長した夫の企業は日本でのシェア拡大のため、夫を日本に戻したのだった。
アメリカに行くときは一研究員だったが、今度は研究所の所長だけではなく、会社の取締役としての肩書きがついていた。
夫が帰国してしばらくたち、女は久々に夫と一緒に夕食をとる機会があった。
こうして夫と会うのも10年振りだった…
「お互い 年をとったね」などと二人は笑いながら食事をした。
女の不倫が原因で離婚してしまったが 夫と10年ぶりにあった今 なんのわだかまりもなく話ができる、むしろ 今のほうがお互い古い親友のようにつきあっていけるような気がした。
夫の懐の深いおかげ・・・
離婚してもこんな風につきあえることを女は感謝した。
夫の話から、由香も一緒に帰国し ある科学誌の出版社に勤め始めたことを聞いた。
大学で学んだ心理学を生かした仕事も探したが、日本で取った資格や経験などはなかったことから一旦あきらめたとの事だった。
出版社では英語を生かして、記事を翻訳したり、外国の研究者が来日すると通訳したり、忙しくも楽しそうに働いていると聞いた。
夫は 今日二人で食事をすることを由香に伝え由香も誘ったが、仕事を理由に断られたと残念そうに言う。
女は夫に、いつも気を遣ってもらってありがとうと感謝を言いながら 娘と楽しく会って話す機会はもしかしたら一生ないかもしれないと思った。
それが私への罰・・・
お互いに忙しく、東京の空の下で元気に過ごしていることを頭の片隅に置きながら季節がすぎていった。
ある一月の朝だった。
職場に着いて、税務の研修資料を部下に手配させようとしたとき、ポケットのケイタイがぶるぶると激しく震えた。
女は携帯を手にとると夫からであることを確認し、いぶかしく思いながら手に取った。
「おはよう。どうしたの?」
「由香が、由香が自殺未遂を・・・」
女はタクシーの中で心を落ち着かせようとしても体中が震えるのをとめることができなかった。
「どうして?」
「どうして自殺を・・・?」
由香は帰国してから、元気に仕事していることは時々夫からのメールで聞いていたのに、なぜ自殺未遂をしたというのか?
病院の夫からの知らせで、朝 由香が起きてこないので部屋に行ったら、意識のない由香がいた。
ベッドの下に睡眠薬の空き瓶がころがっていたことを聞いた。
病院は夫の自宅から一番近い救急病院だった。
病院に行くまでに夫から、由香の着替えと保険証を自宅から持ってきてほしいと言われ、動揺したまま自宅に向かった。
帰国したときに夫が、機会があれば自宅で由香に会えば?と以前 自分が使っていた鍵を渡されていたが、それが今こんな形で役に立つなんて・・・女は自宅の前でタクシーを降りると、急いで二階の由香の部屋に上がった。
10年以上ぶりのこの家で感傷にひたる間もなく、由香の部屋のクローゼットをあけた。身の回りのものをそろえているとき、机の上の携帯が鳴った。
一度は鳴らしっぱなしにしていたが、また鳴った。
鳴り続けた。
女は携帯を手にすると、着信の画面に「編集部長」と出ていた。
「会社の方!由香の欠勤のことを知らせてないんだわ!」
女は迷わず携帯に出る。
「もしもし・・・」
女が出ると、電話口の向こうに中年らしい男性の声が響いた
「由香?大丈夫?今日 休んでいるから心配してたんだよ。・・・昨日は病院に付き添えなくて悪かった。体は大丈夫?君には本当に申し訳なく思ってる・・・でも、妻とは別れるわけには行かないんだ・・・」
女は携帯を耳にあてたまま、今 由香のまわりに何があったのかを悟った。
その場に立っていることがやっとだった。
女は携帯を置くと、床におとしてしまった衣類をバッグに詰めようとして、ふと机の脇のくずかごに目をやった時、写真が何枚かビリビリに破られているのが目に入った。
その一片を手にしたとき、女はうちのめされた。
その写真は少女の頃の由香と写っている女の写真だった。
病院に着いた。
ベッドの脇で夫が肩を落として座っていた。
声をかけるとふりむき、力なく笑った。
胃の洗浄をしたのでもう大丈夫とのことだった。
女はベッドの上で10年ぶりに由香を見た。
すっかり大人っぽくなっている娘がいた。
血の気のない真っ白な顔で横たわっている由香がいた。
その頼りなげな寝顔を見ながら女はこらえ切れずに泣いた。
女は自分の記憶の中の由香を辿っていた。
保育園のお迎えに、いつも閉まる時間ぎりぎりに向かえに行くと 誰もお友達のいなくなった室内で一人でパズルをして遊んでいた由香。
私が声をかけると本当にうれしそうに胸に飛び込んできた。
保育園の先生方にも助けられたが、わがままも言わずに待っててくれた由香。
小学校一年生のとき、私の帰宅の遅い日も大きな花丸をもらったあいうえおの練習ノートを見せるために起きて待っていて私に見せてくれた由香。
小学校の発表会で、ステージの上から私を探し、姿を見つけるとやっと安心してリコーダーを吹き始めた由香。
帰宅してあわただしくドアを開けると玄関にうずくまって眠っていたこともあった。
頬には涙のあとがあったっけ。
「ママ、あのね・・・」
「ママ、聞いて・・・」
「ママ、私ね・・・」
いつもいつも 私といられる時間を惜しむようにまとわりついていた。
今更 そんな日々がひとつひとつ思い出されてきて女は涙がとまらなかった。
母親の仕事の忙しいことをグチもいわずに由香は一人で、寂しさをかかえて大きくなったのだ。
少女になってこれから大好きな母親と親友のように過ごせるはずだったのに、今までの寂しさを埋める大切な日々も与えずに別れてしまった。
由香との記憶は中学でテニス部に入部し真っ黒になって張り切っていた・・・そこでぷつりと途切れている。
今 ベッドでやつれて眠っている娘は母親の知らない間にすっかり大人になっていた。
女は心から詫びた。自分の犯してしまった罪で娘の心をずたずたにしてしまった・・
・許しを乞うつもりは一切なかったが、今 女は母親としてこの娘にできることはすべてしなければ、させてほしいと静かに考えていた。
女は夫に、職場に電話を入れると伝え病室を出た。
総務課の友人、中村さえに電話を入れ、明日からしばらく有休をとりたいと伝えた。
中村さえは女より5歳年上で総務課の課長だった。
5年前に女が健康診断で初期の子宮頸がんがみつかり2週間入院したときも年老いた女の母親の代わりに身の回りの世話をすべてやってくれた。
さえはキップがよく面倒見のいい性格で、独身ということもあり、女は親友と言うより同士のようにつきあいをしていた。
自分が離婚したいきさつもさえにだけはすべて話していた。
女は娘の状態を手短に伝えた。
さえはすぐに言う。
「あなた、介護休暇を申請しなさい。私が全部手続きしてあげるから。今 お嬢さんをフォローできるのはあなたしかいないんだから!」
「介護休暇・・・」
籍はなくても娘にはちがわない。
でも、まわりで介護休暇の申請をした人を聞いたことがない・・・さえはそんな女のとまどいを電話口で察していった。
「大丈夫よ。上長との面談とやらも全部 私が段取りするから!私が何年総務のお局してるとおもってるのよ!」
明るく言い放つ、さえの声に女は勇気付けられた。
翌日職場に行くと、形式的に課長と短い面談はあったが、さえのおかげでいくつかの書類にサインし押印するだけで介護休暇の申請は下りた。
職場の同僚は女の母親の具合が悪くなったと思っているらしく口々に
「お母様は大丈夫なの?」
「老人の介護は本人にも体力的にきついらしいから気をつけて・・・」
など口々にねぎらってくれた。
早々に職場をあとにして病院に戻った。
主治医から「自殺未遂をしたものは繰り返すことが多いからしばらくは目を離さない方がいい」と忠告されていて、夫か自分か どちらかは常に由香のそばにいなければと話したのだった。
病室に入ると、由香は今日退院できると話しがあったと夫が言う。
女は夫に介護休暇を申請して受理されたので、しばらく由香の世話は自分がしたいと申し出た。
由香はそのやりとりを聞いているのかいないのかベッドの上で無表情で窓の外を見ていた。
「ありがとう、今 君の仕事も忙しい時期なのに。正直言って 自分ひとりでは今の由香をどうやって受け止めていいのかわからなかった・・・」
夫は退院の手続きをしながら女に礼を言った。
「感謝しなければならないのは私です。私のせいで由香が今まで傷ついてきた分お返しをしなくちゃって思ってる。そのチャンスを許してもらえて本当にありがとう」
三人はタクシーでなつかしい我が家に戻った。
10年前までここで三人幸せに暮らしていたのだ。
夫と由香がアメリカに行っている間は貸家として法人契約していたようだが、1年前に帰国してから夫と由香がまた暮らしていたのだった。
女は由香の部屋に入り、ベッドを整えようとした。
「触らないで!」
由香が女をにらみつけながら叫んだ。
「私の部屋に入らないで!」
由香に大声で拒否され、女はその場に立ちつくした。
夫は由香の部屋に入り由香をなだめていたようだったが、女は台所に降りて行きお昼の支度にとりかかった。
大声でののしられようが無視されようが女は覚悟を決めていた。
由香とこれからしばらくは一緒に過ごすことが出来るんだもの。
由香のためにしてあげられることは全部しよう・・・女は近くのスーパーで買ってきておいた食材を手際よく冷蔵庫にしまった。
由香は病院でもらった軽い睡眠導入剤を飲むとすぐに眠ってしまった。
心も体もぼろぼろになり食事をしたり会話をしたりするような前向きな状態ではないことが見て取れた。
由香が眠ったことを確認すると夫が階下に下りてきた。
そしてしばらくは夫が会社に出ている時間は女が由香に付き添うことを話し合った。
夫は一緒にここで寝泊りすればいいと勧めてくれたが、由香の精神状態を察して女は断った。
自分を拒否している以上、四六時中、母親と一つ屋根の下にいることは由香にとってはかえって安らげないと思ったからだ。
ただ、心が健康になるには時間がかかっても無理にでも食事をさせ体力だけは取り戻させたい。
そして二度と自殺未遂などしないようにさせなくては・
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聖域 ④
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2007-02-22T21:31:04+09:00
2007-02-22T23:43:54+09:00
2007-02-22T21:31:04+09:00
juno0501
聖域 ④
男が口を開いた。
「今日僕は帰ります・・・アキコの両親に会うんです」
結婚するんだ・・・
女は現実に戻り 自分が何をしているのか目が覚めたように呆然とした 。
アキコが男と結婚すれば本当に自分は楽になれる。
そうわかっていてもいきなり崖に落とされたようながっかりした思いがあった。
男は何も言わずに女をやさしく抱きしめた。
そして二人はだきあったまま眠った。
朝女は男がすでに日本に戻ったことを知った。
女は空虚な感覚を覚えたがむしろ精力的にいろいろなところをまわった。
なるべく男を思いださないように自分の韓国語を使って韓国を楽しもうと努力した 。
夕方までは韓国にいられる 日本に戻ったら自分のいるべき日常が待っている。
でも、二人で会っているときのこの満たされた時間が、 本当にこれで終わってしまうことに覚悟するしかなかったしそれでよかったと思う。
女は明洞聖堂についた。
聖堂の中ではミサが行われているようだった。
女は中には入らず、しばらく聖堂の前でたちすくんでいた。
夜 女は帰国した。
娘と母親の楽しい鴨川の話を聞き相槌を打つ女。
韓国のことも娘に聞かれたが言葉少なに答え 早々と自室にあがった。
階段を上る女の背中をみつめる娘…
今頃男はアキコの両親と和やかに歓談してるだろう。
誰が見ても誠実でりっぱに見える男。
どんな親でも彼のような男と娘が結婚するとなれば本当に安心するだろう。
親の世代にとってはまじめで誠実でおまけに一流商社に勤務してる男は大当たりと思うにちがいない。
自分が望んでいた展開なのに複雑な思いを抱きながらベッドに横になり本を読む。
ひとりになればなるほど韓国での夜を思いだしてしまう・・・
今朝まで自分は男の胸の中にいた。
目をつぶると愛撫しながら囁く男の声が聞こえてくるようだった。
「大丈夫 また明日から仕事が待ってる 今度こそ忘れよう 忘れられる」
また月日が流れた 女は忙しい日々を送っていた。
忙しいおかげで何も考える暇もなく毎日がすぎていった
先週帰国した夫とも 毎日帰宅が遅くゆっくり話す暇もない。
韓国語教室で会うアキコも毎日忙しそうで最近は休みがちだ。
数ヶ月後に 男との結婚が決まり 何かと準備しているようすだった。
今は動揺しないで話を聞くこともできる自分がいた。
ある日 夫からメールが入り食事しないかと誘われた。
珍しい。
夫と外で食事するなんて一年ぶり いやもっとだ 。
そういえば夫とは家でじっくり話もしていなかった。
二人とも仕事だけを考えて日々を暮らしていた。
娘の由香も中3になり塾の帰りも遅く皆 一緒に食事することも少なくなっていた 。
夫と何を話そうか考えなければいけないなんて変な夫婦と苦笑しながら待ち合わせのレストランに行った。
中華料理を二人で食べ紹興酒を飲みとりとめもなく話をした。
少し沈黙すると夫は自分がアメリカの半導体メーカーにヘッドハンティングされ、それを受けるつもりであることを話はじめた。
「 アメリカで暮らす?」
何も相談もなく夫がすでに決めてしまったことに困惑しながら聞いていると 夫はキャリーケースから書類を取り出した。
離婚届けだった。
女は驚きをかくすことができなかった。
「由香はアメリカに連れていきたい。君は一人でも大丈夫だよね」
女は震えながら夫に聞く。
「なんで、なんで私たち離婚しなくてはいけないの?」
「由香が気づいたんだよ」
絶句した。
何を気づいたと言うのか?
男との逢瀬を?
紹興酒を持つ手がかすかに震えている。
神様 これが罰ですか?これが・・・
回想
由香はリビングのチェストの奥に女が昔使っていた携帯電話をみつけた。
クラスのみんなは持っているのに自分はまだ携帯を買ってもらえないことが今一番の不満だった。
「中学生だって必要なのに・・・」そう言いながら、その母親の携帯に充電器のコードを差し込んだまま、電源を入れてみた。いろいろな操作をして感触を楽しんでみた。
その携帯は、メールの履歴やデータフォルダなどはすっかり消去されてあった。
「あたしも早くほしいよ 携帯くらいは・・・」
そうつぶやきながらある画面が保護されていることに気づいた。
カレンダーのところだった。
5年前のカレンダー?
そのカレンダーを動かしていると日付にメモ書きがしてある。
それは一月にだいたい一回くらい、2回のこともあった。
「○月×日Pホテル703号室・・・○月×日Pホテル1012号室・・・○月×日Pホテル805号室・・・」
由香は笑顔の消えた顔でそのメモ書きをみつめていた。
由香は今まで私に何も言わず悩んでいたのだろう。
女は心から由香に詫びた。
夫は続ける。
「アメリカには由香の夏休みには立つつもりだ。高校は実はこの前アメリカ出張の時にいくつか見てきてだいたい決めたんだ。向こうに行って最終的に由香が決めるよ」
家族の中で自分抜きで話が進んでいた 。
自分が男のことを忘れるために仕事に没頭していた頃由香は母親の不倫に気づき心を痛めそんな娘に全く気づかないどころか娘の存在さえも心になかったかもしれない自分を責めた。
最近 私に対して話しをしてくれなくなったことさえ 思春期特有のものとして大して気にもとめなかった。母親失格だ。
夫は由香に母親の携帯のことを聞かされたが取り合わなかったと話した。
ただ5年前 確かに妻は夜遅く帰宅したことが何度かあった。
残業の多い職場であることは重々承知しているが、深夜に帰宅するほどの残業?と思ったことをふと思い出した。
でもそれ以上の疑問は抱かなかったこと。
妻の浮気などは 自分の妻に限っては遠いことだと確信していたから。
今回のアメリカ行きの話が来たとき、(三ヶ月前のアメリカ出張は先方の会社と契約に行ったのだと今知らされた。)その喜びをすぐに妻に伝えたくて小石川の税務署に直行し、女の帰りを待っていた。
妻は税務署から出てくると、近くにいた夫には気づかずに深刻な顔でタクシーに乗ったのを見て、男も胸騒ぎを覚えて追った。
銀座の喫茶店にたどり着いたとき、妻が見知らぬ男と真剣に話すのを、涙ぐむ妻を見てしまったことを淡々と伝えた。
夫は二人を見て悟ったのだった。
由香の心配が事実だったことを。
夫は続けた。
「君に問いただそうと思ったよ。でもその通りだと君に肯定される場面は僕には耐えられなかった。それに君は・・・一人でも大丈夫だよ。」
大丈夫?
何が大丈夫?
自分を束縛から解放させてあげるとでもいいたそうな口ぶりだった。
夫は昔から優しい。
自分のことをよく理解してくれている。
夫の協力で仕事を続けてこられた。
それは今おもえば、女の性格を理解してるがゆえに家庭以外の世界を持ち続けることを言い続け、応援してくれていた。
そんな夫の理解を利用して自分は・・・私は夫も娘も失って当然だ・・・
結局自分も家庭向きの女じゃなかった
男と同じ偏った人間だったのかもしれない・・・
そのあと食事ものどを通らず、夫と二人で家路に着く
。無言で電車に揺られている。
自宅についた。
娘の顔をまともに見ることができない。
娘は「おかえり・・・」とテレビを見たまま声をかけた。
女はひどく疲れ何も考えずに部屋へ行ってしまった。
自分がしてしまったおろかなことで今 家族を失おうとしている。
自分を責める気持ちでどうしようもない反面 心の奥底で これから一人ですごしていくことに意外なほど寂しさを感じなかった。
自分はおかしいのか?
体を求めて結婚に踏み切れない男を責めたことがあった。
「責める資格なんて私にはなかった・・・」
結局男と自分は同じ。
何も疑問をいだかず結婚して子供を作り家庭をつくった。
でも心の中でいつも一人になれる場所をさがしていた自分。
家にいるときも、職場でも。
翌朝 娘に朝食を作り送り出す。
女の顔を見ずに出かける娘。
この娘とは話さなければ。
許してもらおうとは思ってない。
夏になった。夫はアメリカ行きの準備で連日忙しそうだ。
娘の由香の環境のことも彼一人でやっているのでなおのこと忙しいのだろう。
女はすでに離婚の手続きを済ませ小田急線沿線沿いに2LDKで一人住まいしている。
由香とは家を出て以来一度も会ってない。
ただ女の母親のところへは先週一人でふらっと来て一緒に食事をしたと聞いた。
夫には由香の学校の書類などをたまにメールで聞かれたりする。
離婚後 二度ほど夫とは会った。今までと全く変わらず、話し合えてお互いの新生活を話しながら、笑いさえ出るようになった。
感謝している。自分をあからさまににくむことをせず、心配してくれて、会ったときは妻が卑屈にならないように結婚前のように接してくれる。
「ありがとう」と別れ際に言うと「・・・君は由香を失ったんだ。それで十分だよ」
結局 由香とは一度もきちんと話をしないまま夫と由香はアメリカに行った。
秋の初め。アキコの結婚式の日。女は早めに会場に着き控え室を訪ねた。
美しいアキコがいた。
「アキコさんはきっといいお嫁さんになるわ おめでとう!」友人の門出を心から祝える自分がいた。
女が控え室を出るとそのあと男が入ってくる。
アキコは「今 絵里さんが挨拶にきてくれたの」と男に告げた。
「彼女 少し前に離婚したのよね・・・理由は聞けなかったけど・・・一人になったって言ってたから娘さんはご主人がひきとったのかしら・・・」男はその言葉を聞き驚愕した。
手が震えてきた。
「なぜ?なぜ離婚したのだろうか」
「自分のせいじゃないのか?」
男は落ち着かなく窓のそばに立つ。
「どうしたの?顔色が悪いよ」アキコに言われてはっとする男。
「すぐ戻る」そうアキコに伝え男は部屋を出て女を探した。
ロビー?レストラン?ティールーム?どこにも女はいなかった。
自分は女に会ってどうするつもりなのか?
自分のせいで離婚したと聞いたら一体どうするつもりなのか・・・
自分の本能につき合わせてその結果女は家庭を失ったとしたら・・・
女ではなく自分に罰が与えられるべきなのに・・・
式の予定時間が少し過ぎていた。
男の弟が彼をみつけあわてて呼び止めた。
「兄貴!何 やってんだよ!」
厳粛なパイプオルガンが響く中 式が始まった。
大勢の列席者の中を見渡すのだが自分の場所からは女を見つけることはできなかった。
式が始まる。
自分はここにいていいのか?アキコと愛を誓えるのか?
式がすすみ 神父の声が響く。
「・・・・誓いますか?」
自分に一生の誓いがこんな気持ちでできるのか?思わず 列席者を見る。
女を探す・・・
なかなか答えない男にアキコも顔をみつめている。
列席者もざわざわし始める。
諦めた様に男は答えた。
「誓います」
式が終わった。
涙ぐむアキコ。
チャペルを出ると、たくさんの友人や家族の投げかけるライスシャワーの中を二人は歩いた。
二人はそれぞれの友人にもみくちゃにされた。
輪の遠くに女がいた!笑顔で自分たちに拍手している。
男は思わず人をかきわけて女に近寄る。
「おめでとう!」
久々に見た女は何かふっきれたのか凛とした感じとほのかな色気を感じさせた。
「僕のせいですか?」
「僕のせいであなたは家族を失ったんですか?」
「あなたのせいなんかじゃないわ」笑顔で落ち着いて答える女。
女は続けた。「負い目なんか感じないでください。私 今の一人の生活 案外気に入っているんです。」
「罰を受けるのは僕であるべきなんです」
女「罰なんて考えないで」
「あなたは家庭をもったのよ。幸せにしてあげる家族を」こぼれるような 女の笑顔。
自分たち二人のそばでアキコがブーケトスをし、若いアキコの友人たちがキャーキャー騒いでいた。
男はいっそ 自分を責めてくれと心の中で思う。
自分だけがぬくぬく幸せになっちゃいけないはずだ。
女はそんな男の心の中を見透かすように言う。
「そんなに私に負い目を感じてしまうんだったら・・・私からお願いします。一生 アキコさんと添い遂げて下さい。」
そう言うと 女は振り向いて歩き出した。
呆然とたちすくむ男。
その二人を少し後ろで アキコは見ていた。
前編 終わり。
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聖域 ③
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2007-02-22T21:28:31+09:00
2007-02-22T23:43:41+09:00
2007-02-22T21:28:31+09:00
juno0501
聖域 ③
女から男の事をアキコにはもちろん聞かない。
ある日の仕事中アキコからメールが来た 。
「大変です!高岡さんがダウンしちゃった!一緒にお見舞いに行ってくれませんか!」胸の高鳴りを覚えたが断るつもりでメールを返そうとすると今度はアキコから電話が架かってきた 。
「お願いします!絵里さんの職場からすごく近いんです!私一人で行くほど親しくないんですよ。情けないことに」
「でもなんで私が?申し訳ないけど会社の方と一緒に・・・」言いかけると畳みかけるように「チームの女の子も誰も彼の家を知らないんです。私しか」
あわてて話すアキコの話から、彼はチームの責任者として無理をして風邪をこじらせているらしいが部長には今週一杯休みがほしいと連絡があったらしい 。
重要な会議までは無理をおして来ていたらしいがここに来てダウンしたと。部長に住所を聞いたのだと。
一人で行きなさいと女は思う。 彼がほしいなら一人で。
何度も何度も懇願され私が行っても役にたたないわよと断りつつ承諾した。
小石川の職場から湯島の駅でアキコと待ち合わせた 。
アキコは近くのスーパーで食材を買う。
てきぱきと食材をかごにいれながら、つきあわせてごめんなさいと詫びるアキコ。
何度か彼にはアプローチしてるが全く隙がないらしい。
前回麻布で食事をしたとき湯島の彼のマンションの場所はだいたい聞いていたこと。
部長がかなりひどい風邪らしいと会社で耳にしていてもたってもいられないとおもいたったが一人で行ったら余計なお世話と思われる。
会食のあと男が 女を感じのいい人とほめていたので誘ったのだと女に告げた。
男のマンション。 オートロックに出た男は咳をしながらしゃがれていた。
二人で来てますと告げると少し沈黙してロックが解除された。
部屋の前まで来ると女は思う「神様!私をみまもって!」ドアが開き ぼさぼさ頭の男 。熱があるような顔つきだ。
麻布で会ったときに比べてかなりやつれてる。
アキコは男を見て言う。「先輩大丈夫ですか?部長からの伝言もあります。おかゆ作ってすぐ帰りますから!」何も言わずまた男はベッドに戻る。 苦しそうだ。
部屋に入ると 2LDKでゆったりしてる が殺風景な部屋である。
キッチンも食器が洗わないまま置いてある。
女はぼさぼさ頭の男を見て ものすごく愛しさを覚えた。
5年前、二人は愛し合った後 眠ってしまったことがある。
目が覚めたとき真夜中だった。
女は身支度を急ぎ部屋を出ようとする。
そのとき 男はぼさぼさ頭のままでタクシーに乗せてくれた・・・
アキコは手際よく洗い物を片付け、おかゆの準備をする。
女は料理は苦手だった。アキコの指示で動く女。
アキコが料理が得意といっていたのはうそじゃなかったんだ・・・主婦なのは自分なのにはずかしさを覚える。
同時に他人の家では遠慮なく振舞えない自分の役立たずぶりが情けなかった。
おかゆの炊けるにおい。
おひたし サトイモの煮物。
全部アキコが作った。
その間 女はリビングを片付けた。
韓国の宋廟をとった大きなパネルがかけてあった。
ふとチェストの上に目をやると、以前5ねん振りに再会した麻布のレストランの店のカードが置いてあった。
そのカードに何かメモしてあった。
「○月×日 再会できるとは!」
女は思いを振り払い雑誌類とともにそのカードをわざと目立たないように隅に片付けた。
二人は片付いたリビングに食事を運んだ。
どうやらもう自分は帰ったほうがいいようだ。
あまり役に立たなかった・・・自分は何のためにアキコに付いてきたんだろう。
女は男に軽く会釈し、アキコに小声で「しっかり看病してあげて」と伝え、玄関に向かった。
すると男がふらふらしながら女を追ってきた。
男に押され二人はドアの外に出た。
男はドアを後ろ手に閉め、驚いている女を強く抱きしめた。
声を出すこともできない女。
彼を振りほどきエレベーターに乗る。
汗くさい男の体・・・熱の高い男の熱い体・・・心臓がどきどきしている。
女は地下鉄に乗る 。
やはりくるべきじゃなかった・・・自分は何をやっているのか・・・
しばらくアキコからのメールもなく 韓国語の教室にも顔を見せない 。
男は治ったのか?治っただろう。
あのあとアキコは料理を食べさせかいがいしく世話をやいただろう 彼はそのあとアキコを抱いただろうか・・・
韓国語の教室でアキコと久しぶりに出会った。
元気そうだ。 アキコは男とつきあい始めたことを女に報告した。 一緒に喜ぶ女。 ほっとした。
もう自分が関わることもない。
アキコは続けた。
「あのあと私もう一度彼の家に行ったんです。食事を作りに」
「その日彼と寝ました・・・」
まじめな顔で続けるアキコ。
それに対して女はどう答えていいかわからなかった。
「以前に比べれば確かに私たちは近い関係になりました でも 恋人同士のわくわくした感じ?はないんですよね・・・次はいつデートするのか 私が彼に聞かなければ決まらないし・・・これって恋人同士って言えるのかな…」
女はだまって聞いていた。
アキコは涙を浮かべている。
男はいったいどういうつもりでアキコとつきあっているのか・・・まさかまさか自分のかわり?自分へのあてつけ?女はこわくなってきた。
男はどうしようというのか・・・女は考えた。
自分が何をすべきか、 全く何もしない方がいいのか 心が揺れる・・・
女は翌日、仕事が終わってから、彼のマンションに行き 郵便受けに手紙を入れた 「メール待っています」とアドレスを添えた手紙を。
メールが来たら彼と話しそのあとまた自分のアドレスを変えればいい・・・
その日の夜10時すぎ 男からメールが来た。 「会っていただけますか?」
女はあえて事務的に「明日七時銀座の○○前の××でお待ちしてます」と返信した。
××はコーヒーのうまい 明るい喫茶店だ。
分かりやすい場所のせいか待ち合わせによく使われる。 女は待った。 今日は伝えることだけ伝えて帰ると。
神様私を試さないで下さい 。
男が来た。
七時少し前に。
コーヒーを注文してすぐに女に言った 。
「アキコさんのことですか?」
女は意を決して口を開く 。
「あなたがアキコさんとつきあい始めたことを聞きました」
「彼女を真剣に愛してあげて下さい」
「おせっかいなのは知ってます。彼女はあなたのこと本当に愛してるんです」
男は静かに答える。
「あなたへのあてつけだと思いましたか?」
「僕も彼女と真剣につきあってみようと思いました・・・以前から僕に好意を持ってくれていることは知ってましたから・・・」
「でもやっぱりだめなんです」
「違うんです」
女はやはり男は昔と変わらない 。
相性のいい女を探してるんだ…
女は急に以前の彼との逢瀬を思い出して体の芯が熱くなるのを覚えた。
男はぼそぼそと話を続けた。
「あなたを愛しているのかと自問自答しました…でもそれは少し違う。ただあなたを抱きたい。 その時間だけが自分には幸せなんです」
「体のことしかかんがえられないなんて人が聞いたら変態ですよね。アキコさんには確かに申し訳ないと思ってます」
女は「…そんな欲望だけを求めていたらいつまでも結婚できないわ…結婚ってセックスに重きを置く人もいるかもしれないでもそれだけじゃない。家庭を作って家族を幸せにすることでしょ?体だけじゃない。何気なく話す会話や子供のしぐさやそんなことでいやされたりする部分の方が多いわ。結婚ってそんな日常が大事なんでしょう?」
「アキコさんとちゃんと向き合って下さい」
一気に言って女は男の目をみる。
男は言った。
「別の女性と僕が結婚してくれればあなたが楽になるんですよね」
そう言われて女は、自分の言葉が彼にとってきれいごとだと思われていることを感じてはっとした。
「その通りよ。アキコの為じゃない・・・自分を早く楽にしたい、もう綱渡りはできないんです!」
なぜか女は目に涙を浮かべている。
はずかしかった。
自分はなんで泣くんだろう。
偽善者だ私は。
アキコのためなんかじゃないのよ・・・
男は困惑した表情で言う。
「申し訳ありませんでした。
結局自分が偏って大人じゃないばかりにあなたを困らせているんだ・・・」
女はレシートをにぎって店を出た。
今日で彼に会うことはないと心に誓いながら・・・
家に着くと中3の娘と母親が楽しそうに編み物をしていた。
母親が声をかける。
「おかえり毎日遅いわね。全く!由香が非行に走っちゃうわよ」
「ママ平気だよ私は。大体ママの作るご飯よりおばあちゃんの作ってくれるお夕飯が最高なんだから!」
母親も由香の言葉を聞くとまんざらでもない様子だ。
近くに一人暮らししているが女も夫も連日遅く最近は毎日のように夕飯の世話でうちに来てくれている。
典型的な専業主婦である母親は家事全般得意である。女は仕事を早めに切り上げてもっと家に居ようと思った。
もっと家族と過ごそうと思った。
しばらく月日が経ち女もまた忙しいながらも 平穏な日々が続いていた。
アキコと会えば彼とうまくいっていて楽しそうな様子をきかせてくれる 。
どんどんきれいになるアキコ。
「アキコさんよかったわね。幸せそうな顔みれてうれしいわ」
女が言うと、アキコは嬉しそうに
「ありがとう」と答えた。
ある日帰宅途中 旅行会社のパンフを手にした。
韓国二泊三日だ。
女は久々に一人旅にでようかと思う。
来月の3連休 由香は母親と鴨川の兄のところに泊まりに行くことになっている。
夫は1ヶ月先までアメリカ出張から帰らない。
しばらく一人旅もしてないし韓国語がどれほど上達したか試して見よう・・・
昔から女は旅は一人が一番楽だ。
家族旅行はともかく 結婚してからも子供がまだいないとき一人で旅にでたこともある。
また夫も山が好きで今でもたまに一人で出かけたりする 。
そういえば韓国好きなところは男との唯一共通の趣味だった。
会ってるときはプライベートなことはほとんど話さなかったが最初の出会いの夜、ホテルの部屋で彼の韓国旅行の写真を見ながら思わず盛り上がったことを思い出した。
もう遠い記憶である。
翌日早速旅行会社に申し込みに行き手続きを済ませた。
韓国行きの日母親と娘をおくりだし身軽な格好で成田に向かう女。
二時間で韓国に着き、日本人客でごったがえす空港からまず水原に向かう。
そしてソウルに戻り 韓国の有名な寺院を巡る。
あーひさしぶりだ。 解放感となぜか落ち着くこの雰囲気・・・女は勢力的に目的地をめぐる 。
ソウルに戻ってから東大門市場で買い物し屋台でとっぽっきをほおばる。
夜七時・・・女はとっておきの場所に向かった・・・
宗廟。
若い頃何度か来た韓国の中で自分が一番好きな場所…
この時間はまた格別なのだ。ひとけもあまりなく幻想的な風景である。
ゆっくり歩きながらしみじみ満足していると自分のすぐ近くに人影が近づき顔をあげたとき、いきなり強く抱きしめられた。
リョウヘイだった 。
「・・・高岡さん!」
唇をふさがれ男の手はきつく女をだきしめている。
長いキス・・・
女は何もできないまま男のキスを受け入れ自分も男の背中に手をまわしていた。
ソウルの Rホテルの一室・・・むさぼり合う二人。
男は女をいとおしくはげしく愛し女もそれに応えている。
一生懸命忘れようとして自分の小さな世界を守ろうと理性的に振舞おうとしてきた。
しかし 目の前の溶けていくこの感覚の前では それは遠くへ追いやられてしまうのだった。
二人のたった一つの共通の話題だった韓国で、今まで会えなかった分を取り戻す様に何度も何度も二人は確かめ合った。一晩中・・・
男はアキ子から女が一人で韓国に行くことを聞きすぐに自分も手続きしたことを話してくれた。
行かずにはいられなかったと男は言った。
以前一度だけ韓国の話をしてもりあがった話を覚えていて絶対 宋廟へは女も来ると信じて昼すぎに韓国に到着してからずっと待っていたと話した。
同じだ。
いつも 覚えていることも考えることも。
女は男の胸の中で満たされた時を感じていた。
翌朝、ホテルで朝食をとり二人で目的地をまわる。
今までできなかった恋人同士のように歩いた。
景福宮をかわきりに、古宮をゆっくりとまわる。
アプクジョンドンまで地下鉄で出て「ギャラリア」でウィンドウショッピングをした。
食事は女の希望でタコイカ鍋をおなかいっぱい食べる。
まわりの人は二人を見たら夫婦と思うだろうか・・・
女は二人で歩きながらふと考えた。
そしてホテルに戻り体が求めるままにむさぼりあった。
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聖域 ②
http://juno0501.exblog.jp/4806752/
2007-02-22T21:27:20+09:00
2007-02-22T23:43:28+09:00
2007-02-22T21:27:20+09:00
juno0501
聖域 ②
室内は二人の荒い息遣いだけが聞こえている。
男の素肌が自分の胸に触れ、男の体温を感じた瞬間 女は溶けていた。
男は優しく女を確かめるように愛撫する。
男に抱かれて女は初めての感覚に捕らわれていた。
慣れた手つきではない男の愛撫が今まで感じたこともない不思議な感覚を与えていた。女は男に導かれるままに新しい場所に行くようだった。初めての場所へ・・・
長い時間が過ぎた。ベッドで二人は無言で天井をみていた。
男は天井を見ながら女と同じことを考えていた。
今日知り合ったばかりの女とベッドをともにしたことも自分にとっては初めてだったが、抱かずにはいられない衝動を抑えることができなかった。
男はけしてもてない訳ではない。
今までつきあった女も3,4人はいる。いつもまじめに付き合ってきたし、その結果結婚になればと思いながらつきあってきたつもりだ。
でもいつも踏ん切りがつかず、男から別れを告げていた。何が原因なのか、なぜ、この女、と決められないのか自分でもよくわからなかった。
今 女を抱いてその原因がはっきりした。
自分の求めているものをこの女がすべて持っていた。
自分は相手に体の相性を求めていたのだろうか・・・
二人はそのまま眠った。外は雪が降り続いていた。
翌朝は快晴だった。
女は目がさめると衣服を整え、男の部屋を出ようとした。
男が声をかける。
二人はきまづい雰囲気を感じてはいたが、あえて女は男を見て言う。
「この足では今日もスキーはできなそうなのでチェックアウトして 東京に戻ります。」
右足の痛みは昨日より痛む。右足をかばいながら歩く女を見て男は言う。
「僕も今日帰ります。東京まで送りますよ」
二人はそれぞれ別々に朝食をとり、チェックアウトをし、10時にホテルのロビーで待ち合わせをした。
10時少し前にロビーに行くと男がすでに待っていた。
「車を持ってきますから5分後にあそこで待っててもらえますか?」男はホテルの入り口を指差した。
車に乗り込む時、男は女の足を気遣ってからだを支えてくれたが、自分の体に触れる男の手に女はドキッとしてしまった。
二人は車のなかで一言も話さなかった。
女は昨日自分がしてしまったことを後悔していたが、今は後悔しても取り返しがつかないんだと思う。
ただ昨日自分が味わった感覚は何だろう。
学生時代から付き合ってきた今の夫とそのまま結婚し、平和な毎日だった。
夫はやさしく思いやりのある人だ。
大手精密機械メーカーの研究員として平均以上に恵まれている。
女自身も税務署勤務で、仕事を持っており、夫の理解と強い勧めで仕事を続けてきた。
子供をもうけてからも公務員の恵まれた環境と夫の全面協力で乗り切ってきた。
娘ももう小4である。
幸せな毎日の中で不満もなく生活していたが男との一夜で彼女は自分の知らない感覚に初めて出会いむしろとまどっていた。
夫も自分もセックスに関してはかなり淡白で、今までそれに対しても疑問も抱かずにきた。自分の体の深いところで隠れたものがあったことに女は少し恐れを感じていた。
長野を出るまではかなり雪も深かったが、東京に近づくにつれ、車のスピードも上がってきた。
練馬の近くまで来ると、女は家の近くまではあえて頼まずにそろそろ降りてタクシーをひろおうと考えた。
過ちを犯したことへの後ろめたさがあった。
「次の信号のあたりで降ろしてもらえますか?」
女は男を見ずに言う。男は車を信号の近くのコンビニの駐車場で止めた。
「ありがとうございました・・・」男は「あの・・・」と言いかけ、そのあと女の目を見て会釈した。彼の車が過ぎ去るのを待って女はタクシーを拾う。
自宅に着くと夫が心配そうに駆け寄ってきて女の荷物を取る。
「散々だったね。足はどうなの?」車の中で女は夫にメールをした。足をくじいてしまってもう帰ることを。娘も奥から出てきた。
「大丈夫。大したことないのよ。」
娘が言う「ママはもうとしだね!」
笑いながら家にあがり、「ちょっと疲れたからシャワーを浴びるわ」と 女は荷物をリビングに置いたまま浴室にむかった。
一人になりたかった。体に残る余韻を確かめるようになぞるようにシャワーをあびる・・・でも今日からまたいつもの毎日がくる。忘れよう。
それから一月。 税務署の忙しい毎日。残業で遅くなる日は彼女の母が娘の夕ご飯を用意してくれる。
残業を終えて赤坂の駅に向かう。 ふとホームの反対側で電車を待つ男に目を留める。
「彼?・・・」 地下鉄で反対方向に行き過ぎる男。
「なぜ赤坂に?会社がここなのだろうか?」胸のたかまりを押さえながらも甘美な記憶に女は酔った。
自分は何を考えているのだろう。
自分は自制心くらい、理性くらい持っているはずだ。関係のないことを考えちゃいけない。
税務署は4月くらいまでは繁忙期である。
連日残業続きだったがたまたま今日こそ早く帰れそうと駅に向かいながら 娘に電話をしようと携帯をバッグから取り出した。
そのとき 自分の前に立ちすくむ影を感じた。
見上げると彼だった。一瞬 恐怖感で引き返そうとする。腕を掴まれた。
「少しお話させてくれませんか?」振り切って帰らなきゃと考えながらも女はその場にたちすくんだ。
ホテルのロビーで二人はコーヒーを飲んだ。
食事を誘われたのだが、それほど時間を採る気が自分にはなかったのでコーヒーにしたのだ。改めて 自分の自己紹介をしながら足はもう大丈夫かと男は気遣った。
スーツ姿の男はスキー場で見た彼よりずっと大人っぽく見えた。
ゲレンデで恋人をみつけて都会で会うとがっかりするというような話を聞いたことがあるが、彼はむしろスーツ姿の方が似合っていた。
赤坂周辺で何度か女をみかけたと男は言った。
ていねいで誠実な口調はあの時の雰囲気を思い起こさせる。
白馬での夜のことは忘れようとしてきた。会わなければ忘れられる。と。
「 いったい彼は私になんの用があるのだろう?」
沈黙をやぶり男が話はじめる。・・・一夜をともにしてから忘れられないことを 。
「申し訳ないが、愛していると言う感覚ではないと思うんです。 体の相性の善し悪しがあるのならまさにその人をみつけたと自分は思ったんです。あなたの 生活に踏み込む気持ちは全くない 。常識はずれ変態と思われるだろうがもう一度・・・」
「抱かせてくれませんか・・・」男は一気にそういうと女を見つめた。
この男は自分が何を言っているのかわかっているのだろうか?自分には平穏な毎日がある。 男の担当直入なせりふをききながらいろんな思いをめぐらす。
めぐらしながら自分と全く同じ思い 相性のこと 初めての感覚を抱いていたことに驚いた。
長い 長い沈黙。
沈黙を破って男が言う。
「すみませんでした。常軌を逸してるってやつですよね。びっくりされて当然です。失礼なこと言ってすみませんでした。お会いしたとしてももう声かけたりしません。ご迷惑はもうかけません」
彼が立ち上がりかけたとき女は信じられない言葉を発した
「・・・私も・・・同じ気持ちでした・・・」
そのホテルの一室 男と女は同じ感覚を思い出そうとしていた。
長いキスをして素肌を触れ合わせると女は求めていた感覚に出会えた。お互いの体の隅々までを昔から知っているかのように二人は確かめ合った。
その日から月に一度くらいのわりでホテルで女は男と会うようになった。
男は女のことは名前とメールアドレスしか知らない。
最初の日に薬指の指輪を見たから既婚者であろう。
男はたまに仕事の話をするが女はプライベートをけして話さない。
男も女のプライベートに関与する気はまったくない。
心底 彼女の家庭を壊す気はない。
むしろ自分の本能につきあわせていることは肝に命じてる 。
女も楽しんでいるとしても・・・
二人は会えば限られた時間を惜しむように楽しむ。
世間の恋人であれば映画をみたり、食事をしたりするのがデートであろう。
二人は恋人ではない。ベッドの中で二人の感覚を楽しむための時間なのだった。
ホテルで会うと、二人はベッドで貪りバスルームで貪った。
最初から数ヶ月たった今、二人の相性はまさに開花したようなものだった。
幸せな震えに涙さえ出る女も自分から大胆になることもできる。
そして5時間ほどの逢瀬のあと 何事もなかったように別れるのだった。
お互いの心の中に一月後に会える楽しみを含ませて・・・
男は体だけ求めているといいながらも女との会話や何気ないしぐさ、男の話しを静かにきいてくれるその雰囲気が、自分を心から落ち着かせ、癒してくれることを感じた。
例えば何かプレゼントを送りたい気持ちもある。
しかし彼女の気持ちの負担になることは絶対してはいけない。
彼女の持っている小さな平和な世界を壊してはいけないし そんなおそれも感じさせてはいけないのだ。
会うようになってから七ヶ月がすぎた。
男との逢瀬のとき彼の口から「ドイツに転勤が決まり、3、 4年帰れない」と、女につげた。
最後の逢瀬を楽しみあっさりと別れる二人。
男は一抹の寂しさを、女も同じ寂しさそして少し安堵を・・・危険で綱渡りをしてきた思いとはお別れ・・・また当たり前な毎日 平穏な日々・・・心の片隅で欲望におぼれる自分を責める気持ちがいつもあった。
5年の月日が流れた。
赤坂税務署から小石川の税務署に転勤した女。
相変わらす毎日忙しい日々。
女は韓国語を習い始めた。以前から好きな韓国の詩を韓国語のまま読んでみたいと思っていたのだった。
そこで知り合った30才の佐伯晶子とうまがあい 韓国語のない日も夕ご飯を一緒に食べたりしている。
ある時アキコからのメールで夕ご飯のお誘いが来た。
「会わせたい人がいます。私の片思いの人をやっと夕ご飯に誘えたの!二人っきりじゃ緊張しちゃいます!つきあって!おごるから!」
自分とは10も若いアキコ。
好きな人ができるとまず自分を誘って食事…これで二度目である。
アキコは男二人で会うほど親密ではなく、かといって同じくらいの友人を誘ったらもしかしたらとられる恐れもあって、射程距離にはいない自分を誘うのだろう。
自分は友人というより叔母とか後見人のような存在なのであろう
「了解です楽しみ!」と弾んだメールを返し明日の仕事の調整をする。(残業しないように。)
今は繁忙期をすぎてかなり余裕のある時期である。
夫はこの数年で出世し最近は連日帰宅が遅い。
というより子供が小さい時は夫自身も残業しないように心がけてくれていた。
むしろ自分の方が気を使わずに残業してきたくらいだ。
多分研究所では使いづらい社員だっただろう。
女の母親のヘルプもあったが 税務署勤務を続けられているのも夫のおかげなのだ。
自分も39になりこの静かな穏やかな環境をもたらしてくれる夫に感謝している。
翌日仕事を早々に切り上げ待ち合わせの麻布のレストランへ早めにつきアキコを見つける 。
彼女に近づきながらその向かい側で自分を見ている男性・・・彼だった。
五年たってまた大人の貫禄を漂わせていた。
男も女を見つめて驚いた顔でたたずんでいる。
そして初対面の振りを二人はしながら会釈し、女は席についた。
「こちらは会社の先輩高岡りょうへいさん…こちらは私のお姉さんのような存在久保田絵里さん・・・」
男は女を見つめた。
確かに五年たった 。
しかし穏やかな感じ人を暖かく包み込むような感じ、芯の強い凛とした感じはかわらない。
元気そうだ・・・二人でむさぼりあった日々が脳裏によぎった。
二年前ドイツから帰国してしばらくの間本社の仕事で忙しかった。
落ち着き始めると同じ空の下 おそらく近くで働いているのだろうか・・・そういう思いがつのり、男は以前のメアドに「帰国しました」とメールしたが即座に「アドレスがみつからない」と返信されてきた。
その画面をみつめながら、思い切るように男は彼女のメアドを削除したのだった。
女はかつて逢瀬を繰り返した彼の目が見れずにアキコのほうを見て テンションの高い話にあいづちを打っていた。
アキコがトイレに行き二人になったとき男はじっと女を見つめた。
帰国してからメールをしたことなどは言えずに沈黙していた。
女も「相性の合う人は見つかったの?」と一番聞きたいことを心の中で叫びながら口を開いた。
「いつ帰国したの?」
「二年前」
「元気そうね・・・」
「ええ・・・」
大人の貫禄の中にも少しも変わらない誠実な様子。
もしかして帰国してから自分にメールをくれたかもしれない・・・と思いながら また二人は沈黙した。
女は五年前 男と別れるとすぐアドレスを代えた。
自分のけじめのためにもう終わらせろと言う神様の示唆・・・若者が出会い系で知り合って素性もしらないまま関係を持つのと同じことをしていたのだ。
男は湯島で一人暮らしをしているらしい。
自分の勤務先のすぐそば!神様は私たちをどうしようと言うのか?あの日々は自分の心の中にしまっておけばいいと思い続けていたのになぜこんないたずらをするのだろうか・・・試されているのだろうか・・・
独身生活が長く一人の生活に慣れてしまったとアキコに男は言う。
「 先輩はもてもてなのにどうして?私は料理は得意ですから 今度みんなで押し掛けていいですか?」などと明るく聞いている 。
彼を中心に会社の中で同じチームで働いているようだ。
アキコが韓国語教室で最近仕事が楽しいと女によく話していたことが思い出される。
アキコはテンションは高いが 彼女ならきびきびと会社で働いていることを想像させた。 同じチーム内で上司と部下お似合いのカップルだ。
自分はその中には全く関係のない、いてはいけない存在。
時間をみると九時だった。女は二人に挨拶をして先に失礼することを述べた。
女は出口に向かいながら男の強い視線を背中に感じていた・・・
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聖域 ①
http://juno0501.exblog.jp/4806733/
2007-02-22T21:25:00+09:00
2007-02-22T23:48:39+09:00
2007-02-22T21:25:50+09:00
juno0501
聖域 ①
☆前編です。この前編、携帯に打ち込んでんで作ったのよね・・・どうりでブチブチきれてる感じね。
白馬は雪がかなり降っている。バスの窓越しに女はわくわくする思いを抱いていた。スキーツアーに一人で参加するなんて何年ぶりだろう、、、学生時代は毎週スキーに行っていたこと
もある。
結婚して子供が生まれてからは家族で来ることはあっても思う存分楽しむ学生時代のようなことはしていなかった。今回大学時代の友人が一泊二日のスキーツアーに誘ってくれたのだが、夫が快く出してくれたのだった。
ところが前日になって友人がひどい風邪で行けなくなったと連絡が入った。
女は自分もキャンセルするつもりだったが今日のために有休をとり、子供の段取りもしてあるのだからと夫に背中を押され出てきたのだった。
予約したスキーバスも満員だった。回りをみると一人で来ているものも結構いるようだ。白馬が近づくにつれ女も気持ちが軽くなる。
スキーを始める前に今日はしっかりストレッチをしてからじゃなきゃ、、、とつぶやいた。最近は仕事が忙しく体を動かしたりすることはほとんどしていなかった。
それに学生時代の柔軟な体ではない、苦笑しながら窓の外を覗いた。
白馬に到着した。雪はやんでいたがしんしんと冷えた澄んだ空気が気持ちよい。
貴重な一泊二日だ。思いっきり楽しまなくちゃ!
女はバスから荷物を取り出し早速ゲレンデに向かう。最近はスキーよりスノーボードをする人が圧倒的に多くそれも下手なボーダーがたくさんいて結構こわい。
ゲレンデもたくさんのボーダーで賑わっていた。
女は二日間乗り放題のチケットを買い板をレンタルショッップで借りてゲレンデにむかった。板をつける前に膝をのばしたり、アキレス腱をのばしたり、手をぶらぶらしたり、心ははるか高いあの上級者コースを目指す。
高速リフトを乗り継いで上級者コースに向かう。
女は厳密に言えばスキーの腕前は中級レベルである。
ただ白馬の上級コースは学生時代から無理やり連れていかれてなんとか制覇したコースだった。家族でスキーを楽しむときはどうしても子供中心のファミリーゲレンデばかりだったし、今回は心置きなく滑れる、、、
女はストックを手に持って滑り始めた。
下半身に力が入り相当緊張していた。女はブランクが大きいために自分の足が弱くなっていることを実感しコースの隅で止まった。
あーあ最初から飛ばしすぎたわ。このコースまだ下までかなりあるしこぶも多い。
自分と同じくらいのレベルの、つまり無理やり連れてこられたスキーヤーも結構いる。
ため息がでた。はるか下をみて女はつぶやく。
「とりあえず降りるしかないわ、、、」意を決して慎重にすべりはじめたその時だった。
下手なスキーヤーの集団が女と同時に滑り始めコースの真ん中で次々とこぶに板をとられて転び始めたのだ。
女の後ろからすべってきた若者が女に激突し、女が前のめりになってバランスを失うとそこに滑り込んできた男に激突し、女は気を失った。
目が覚めるとレストハウスの医務室のベッドに自分はいた。目の前に心配そうに覗き込む男の顔があった。
「気がつきましたか?」
「・・・」
「よかった!」
男がやっと安心したという表情で女に説明してくれた。
上級者コースの上で、自分は団子状にころび始めたところに突っ込んで、その際 男と激突して気を失ったのだと。
恥ずかしかった。
自分のようなおばさんが無理をするからそうなってしまったんだ。
自分よりも年下であろうその男は優しそうな目をして飲み物を持ってきてくれた。
「連れの方はいらっしゃいますか?」男に聞かれ一人できていることを告げた。
「もし連れの方がいらっしゃったら心配してると思って」
女はお礼を言いベッドから降りようとした。
右足に激痛が走った。
男は心配そうに女を支え「捻挫したのかもしれませんね。すぐ見てもらったほうがいい」と女を促した。
女はそっと右足をついてみたり少しまわしてみたりしてから、
「多分大丈夫です・少しひねっただけですから」と男に伝える。
「もし捻挫だったら早くきちんとケアをしないと長引きますよ。常駐している医師がいるようですから今呼んできます。」そういうと男は部屋を出て行った。
女は誠実に対応してくれるその男に感心しながら自分が無理したせいで迷惑をかけて申し訳ないと思う。
男とともに医師がきた。
医師は女の右足をさわりながら、ここは痛いですか?と何箇所か質問をくりかえした。
スキー場に常駐している医師だけあって捻挫や骨折などは日常茶飯事なのだろう。
数分で「大丈夫です。捻挫ではないようですね。シップをしておきますから。ただしもう今日はスキーはしないで下さいよ」
そう言うと男に会釈し医師は部屋を出て行った。
女もいつまでも救護室にはいられない。
けがをしたスキーヤーが次々と手当てに来ていた。
女は「本当にありがとうございました。この近くにホテルを予約しているのでひとまずそちらに行きます。」
「どのホテルですか?車で送りますよ。」
「いえほんとに大丈夫です。ひとりで行けますから」
女は何から何まで迷惑をかけていることが申し訳なくてベッドからおりて歩こうとした。、とにかくみしらぬ男性に親切にされて恥ずかしくてたまらなかった。
右足は痛かったがなるべく平気な顔をして歩こうとした。
男はずっと足元を見ながら
「・・・むりしないで下さい。ホテルはどちらですか?送りますよ。荷物もあるしその足では無理ですよ。僕と激突して足をくじいてしまったんですから気にしないで僕を使って下さい」男はもう一度ホテルはどこか女に聞く。
「・・・Mホテルです」
「本とですか?僕もそのホテルなんです。じゃあ尚更気にしないで下さい。ついでなんですから」男は笑顔で答えた。
女が迷惑をかけていることを心苦しく思っていて遠慮しているのがよくわかったからだ。女は男の申し出を感謝を伝えながらうけた。
実際この足で荷物を取りにロッカーにいったり板を返したりすることは大変だったと思う。男はきびきびと女のかわりに手続きをすべて済ませ車を一番歩かなくて済む場所まで持って来た。
4WDのワゴンに女を乗せ車を発信させる男。
道に出るまでしばらくバックで進まなくては行けないのだが、男は左手をサイドシートにかけて首を思い切り後ろに向けて右手できびきびとハンドルを操作しながら、アクセルをふかす。
そのしぐさがさっきまでの誠実さの固まりのような雰囲気から男らしい、色気さえ感じるものににガラリと変わったと女は感じた。
車の中で男は自分を高岡と自己紹介した。
自分もスキーに来たのは久しぶりだと話す。
休みがあればこんなふうにふらっと一人で来たいのだが、仕事が忙しくてなかなかこれなくて・・・と続けた。
女は「久保田」と自分のことを伝えたがそれ以外は男の話の聞き役だった。
ホテルにすぐ着き男は女の荷物を自分で持ち、足をかばう女を気遣いながらフロントに向かう。
ホテルも周辺のスキー客で込み合っていた。
女はチェックインをすると男に丁寧にお礼を言った。
女の後ろでベルボーイが荷物を持って女を待っていた。
男はひきずっている女の足を見ながら部屋まで送っていったほうがよくないか?と一瞬考えたが 見知らぬ男が一人旅の女の部屋に行くなんて 思いっきり警戒されてしまうか・・・と思い、フロントで会釈し女を見送った。
女は6階の部屋に着くと荷物を置いてベッドに横になった。
ついてない・・・せっかくの一人旅、仕事や夫や子供のことを全部前もって段取りしてきたのにけがをしてしまうとは・・・足を見るとやはりさっきより腫れてきている。
痛みもある。これじゃ明日もスキーは無理だ。窓を見ると夕方になってからまた雪が降り始め遠くのスキー場ではナイターのライトがぼんやりと見えた。
さっきの人も同じホテル、このホテルのどこかにいるのか・・・親切な人だったな・・・30代だろうか・・その割に落ち着いて自分のためにきびきび動いてくれた。。車の中で初対面の自分に言葉を選びながら気を遣って話かけてくれた。
ベッドの上でぼーっとしながらしばらく男のことを考えていた。
「私ったら何考えてんの?!」
女は白馬についてから肝心のスキーはほとんど楽しまないうちに今日は夜になろうとしていることがおかしかった。
あまりおなかが空いてない。
温泉が有名なこのスキー場では、このホテルにもロテンブロを去年作ってそれが好評らしいと聞いた。
でも足が腫れているようでは温泉にも入れない。
長い夜になりそうだと女はため息をついた。
東京の自宅に電話をしてみたが誰も出なかった。
娘と二人で外に食事に行っているのかもしれない。
女はソファに座って窓の外の雪景色を見ながら一人の時間が自分にとって本当に久しぶりであることをつくづく感じた。
今回だって本来なら友人と二人の旅行だった。
女は昔から一人旅がすきだった。
ホテルにいる静かなこの一人の時間が自分をリセットしてくれるような気がするのだ。
結婚して子供もいて仕事も忙しい毎日・・・スキーができないのは残念だがこの時間は貴重に思えた。
女は部屋の中を少し歩いてみた。少し足は痛いが、大丈夫だ。下に下りて軽く食事をしよう。
女は部屋を出てエレベーターに乗った。
かなり混んでいたがそれに乗り込んだ。エレベーターがしまり、また下に下りていく。
レストランのある階で降りると女は足をかばいながら歩いていった。
この階には食事をできるところがいくつかあるようだが、三連休の初日のせいかメインのレストランは家族連れでにぎわっている。
女は 少し高級だがあまり混んでないイタリア料理の店に入った。
雪景色が見れるように窓を広くとってあり照明も押さえ気味で雰囲気がいい。
女は窓際の席に案内されメニューを開いた。、
グラスワインとシーフードのカルパッチョを注文し、窓の外をみる。
ふとみると一面のおおきな窓ガラスが写すレストランの室内の中に男の後姿をみつけた。後ろ姿というより窓の外をみつめる横顔が窓ガラスに写ってわかったのだ。
「彼の長い夜もはじまったんだわ」
男はビールを飲みながらずっと窓の外を見ている。
降り続く雪を見ているというより考え事をしているようだった。しばらくして女の席にグラスワインとカルパッチョが運ばれてきた。
アマダイやタコが意外と新鮮で、おいしかった。
女の席の三つ前に男はすわって窓の外をみていた。
そして今日の出来事を男もまた思い出していた。一人でスキーに来ていたのに足をくじいてしまった女 自分のせいで大切な休暇がだいなしだ。自分が世話を焼くのを申し訳なさそうに、遠慮がちに応じる姿を思い出しながら微笑んだ。
女はパンも注文した。それほどおなかもすいていなかったし、ニンニクをきかせたフランスパンが少しあればそれで十分だった。
スキーができないなら明日チェックアウトしたらそのまま帰ろう・・・ため息をつきながらワインを飲み干す女。
ふと前をみると男はすでに席にはいなかった。
入り口で支払いをすませてレストランを出るところだった。
女は男の背中を見送ってまた食事を続けた。窓の外は雪が相変わらず降り続いている。
窓ガラスがさっきまで座っていた男の席を写す。
女は椅子のところにフリースのジャケットがかけてあるのに気づいた。
「忘れたのかしら?」
女は軽い食事を終え 水を一口のみ 席をたった。男の席に行きジャケットを手にとった。会計をすませフロントに向かう。
「高岡という名前だけで彼のところに届くかしら」
すると男がフロントまで行く横の売店で買い物をしていた。女は彼を見つけると「あの・・・」男に声をかける。振り向いた男は少し驚いて「あ どうも」と笑顔を浮かべる。
「あの、これ忘れられましたよね・・・」
「あ!全然気づかなかった。助かりました」男はうれしそうにジャケットをうけとった。
「買い物ですか?」
「ええ。まだ寝るまでには早いんで、ちょっと・・・」そういいながらビールとつまみを買い込んでいたようだった。女は微笑んで会釈し離れようとすると、男が声をかけた。
「・・・あの・・・もし よければ・・・一緒に飲みませんか?」男が言う。
女は一瞬驚いた。
「かれの部屋で?一緒に?」女は男が自分で誘っておきながら困ったような顔をしているのがおかしかった。女は少しはにかみながら言った。「ええ!」
男は女の返事を聞くと嬉しそうにビールやソフトドリンクを何本か買い足した。
「まだ八時になったばかりだものね。」女は長い夜をすごす相手が出来たことを喜んだ。
男の部屋は7階だった。
7階の角で窓が大きくて五角形の広めのシングルルームだった。
男は「写真かたづけなきゃ」とあわてていいながらテーブルの上に広げた写真をまとめはじめた。
食事の前に写真を広げて、仕事をしていたのだろうか?スナップ写真のように見える。
女は片付けがすむまでは入り口のあたりで待っていたのだが、それを気にして「あ どうぞどうぞ」と男は窓際のソファのほうに促した。
部屋を進むと多くのスナップ写真の風景が女にも馴染みのあるものであることにきづいた。
「あ、これ 韓国ですか?」
「え?そうです。あなたも行ったことありますか?」
男は写真を片付ける手をやめて写真の束をどうぞ、と女に差し出す。
「水原(スウォン)ですね・・・」男は、自分と共通の話題があることに驚き喜んだ。
「僕は学生時代に韓国にはまってそれ以来何度も行ってるんです。最近は冬ソナファンが多くてホンとに込み合ってますよね」
男は韓国のいくつかのスポットを写真をみせながら話してくれた。
1ヶ月前に一人で久々韓国に行ったこと。写真をとったのだが、忙しくてDPEに出すこともできず、今回のスキーのための休暇で写真を整理しようと思い袋のまま車の中に投げ込んで出かけてきたことなどを。
今は元気な冬ソナファンに圧倒されていることなどを面白おかしく話すので、女もおもわず噴出してしまった。
女も20代から韓国ファンで何度も韓国へは行っているが、最近はもう何年も行ってないので、この写真を見ると本当に懐かしいと答える。
二人は自分たちがお互い韓国のどこがどんな風にすきなのかを争うように話し合った。
江陵の日の出の美しさ、鎮海の春の風景、また明洞のトウフ鍋のおいしい店・・・そしていつも感じる韓国人の親切なことなど・・・趣味のあう人に出会えたことが、二人とも警戒心も遠慮も取り払っていた。こんなに楽しい夜がすごせるなんて思っても見なかった。
彼はビールを、女は少し日本酒を飲み、延々と韓国の話を続けた。
最近ではさすがに、にわか韓国ファンが増えたが、自分の趣味とはだいぶちがうため、そんなときは韓国の話もここまで遠慮なく話せることは少ない。
二人は今まで自分の感動を聞いてほしくて、聞いてもらえなかった分 話し続けた。
男の部屋に来てから何時間たっただろう。男が窓のカーテンをあけて外を見る。
「まだ降ってますね」
しばらくの沈黙。
女も窓の外を見ようと立ち上がったときにテーブルのコップを落として割ってしまった。「すみません!私ったら酔ったのかしら・・・」床に散らばったコップの破片を片付けようとする女。
「痛い!」
コップの破片で女は指の先を少し傷つけてしまった。
「大丈夫ですか?」男は女に駆け寄る。
少し指から血が出ている。
男は腰をかがめて女の傷ついた指をつかんだ。
静かな時間・・・
「あの・・・」女が口を開こうとした時だった。
男は女を抱きしめ唇を重ねてきた。
驚く女。一瞬身を硬くした女だが、男のキスを受け入れた瞬間女には何も拒む力はなかった。
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